地中に眠る1.1兆円、銅線ケーブル回収は通信大手に「巨大なチャンス」

AI要約

国際的な通信大手が旧式の銅線ケーブルの回収に乗り出しており、80万トンもの銅を回収する可能性がある。

銅は電気自動車やクリーンエネルギーのインフラに必要不可欠であり、需要は増加している。

銅の回収により供給が増えつつあり、通信会社などが戦略的に取り組んでいる。

(ブルームバーグ): 地中深く眠る豊かな資金源。旧式の銅線ケーブルの存在に米AT&Tや英BTグループ、仏オランジュなど国際的な通信大手が目を付け、その回収に乗り出している。

英国で通信業界向けにエンジニアサービスを提供するTXOの試算によれば、光ファイバーケーブルへの移行に伴い、通信会社は今後 10年間で80万トンもの銅を回収する可能性があり、その価値は現在の相場に照らすと70億ドル(約1兆1000億円)を超える。

「これら大量の資源はすべて、手つかずの状態で眠っている」とTXOのデービッド・エバンス氏。同社は英BTとこの回収に取り組んでいるほか、10数社の世界的大手と協議に入っているという。「商業的に巨大なチャンスだ」と語った。

銅は電気自動車(EV)のバッテリーや風力タービン、その他クリーンエネルギーのインフラに欠かせない。ブルームバーグNEFの試算によれば、銅の年間需要は2040年までに50%余り伸びる可能性がある。一方で銅の採掘は困難さを増し、コストが上昇している。

銅価格はそのため、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となる前の水準からすでに50%跳ね上がっている。ただし最も楽観的な見通しでさえも、年間の銅需要に比べれば回収される銅は微少な量だ。光ファイバーへの移行が完全に行き渡らない可能性もある。医療施設などでは不可欠な通信アクセスを確保するために、銅線ケーブルを残す必要もあるだろう。そうなれば地中から回収される銅が供給を助ける度合いはさらに下がる。それでも供給の増加は歓迎される。

AT&Tは銅のリサイクルでどこに重点を置くべきか、戦略的に考えているという。同社は2021年から23年にかけ、1万4000トン余りの銅をリサイクルし、そのビジネスは拡大すると見込んでいる。

同社で銅の回収・再販売を率いるスーザン・ジョンソン執行副社長は「現在の銅価格に基づくと、われわれのビジネスは相当な規模になる」と語る。同社が現在協業する銅再生センターは全米4カ所。今後さらに増える計画だという。