日銀利上げは年内2回で0.5%も、2%均衡の実現重要-伊藤隆敏教授

AI要約

伊藤隆敏教授は、日本銀行の金融政策運営について、2%のインフレ目標の実現までは慎重に対応すべきだとしつつ、政策金利は年内に2回、0.5%までの利上げがあり得ると指摘。

日銀はインフレ率やインフレ期待、賃金上昇率が2%の均衡に移行する過程にあるとし、金融政策運営は早過ぎず遅過ぎずの金利引き上げ局面に入っていると評価。

また、伊藤氏は、円相場の動向や介入についてもコメントし、160円を超える円相場の回復について分析を行った。

(ブルームバーグ): 米コロンビア大学の伊藤隆敏教授は、正常化に踏み出した日本銀行の金融政策運営について、2%程度のインフレ目標の実現までは慎重に対応すべきだとしつつ、政策金利は年内に2回、0.5%までの利上げがあり得るとの見解を示した。

伊藤氏は30日のインタビューで、ゼロ%付近で均衡していたインフレ率とインフレ期待、賃金上昇率が、2%の均衡に移行する過程にあると指摘。日銀の金融政策運営は「早過ぎもせず、遅過ぎもしない金利引き上げ局面に入っている」とし、0-0.1%程度に誘導する無担保コール翌日物金利は「今年中に0.25%とその後の0.5%はあり得る」と2回の利上げも想定している。

日銀は3月に17年ぶりの利上げに踏み切ったが、物価上昇圧力の継続や外国為替市場での円安傾向を背景に、市場では早期の追加利上げや国債買い入れの減額に対する思惑が強まっている。日銀総裁候補として名前が挙がっていた伊藤氏の指摘は、市場が現在想定している利上げペースよりもややタカ派的と言える。

日銀が2%均衡の実現を目指している中で、足元で鈍化傾向にある実際のインフレ率が2%を明確に割り込む前に、インフレ期待が2%に上がっていくことが重要だと主張。現在はまだ下振れリスクの方が大きいとし、2%均衡が根付くまでは利上げペースを含めて金融政策運営は「慎重であるべきだ」としている。

根強い円安傾向を転換するため利上げが必要との声があることに対しては、「日銀は為替レートを目標にしておらず、説明がつかない」と反論。利上げをするとしても、「例えば135円くらいにしたいとすれば1%では無理だ。2%くらいに上げるなら有意に効くと思うが、国内経済に大きなインパクトを与えるだろう」と語った。

円相場は4月から5月の大型連休中に一時、160円台まで下落した後に政府が2回の円買い介入を行ったと見られており、足元では157円台で取引されている。伊藤氏は、その後1カ月近くが経過しても160円に戻っていないことを指摘し、「介入は成功したといえる。160円はしばらくないという期待を植え付けた効果はあった」との見解を示した。