「男たるもの働け」親に首を締められ、職場でも殴られ…弱者男性の生き地獄「DV被害、いじめ、パワハラの悲劇の話」

AI要約

荒川さんは幼少期からいじめやDVに苦しんだ過去を持ちながらも、大学に進学し自分の好きな絵を学ぶことができた。

男性に対する社会的プレッシャーや固定観念が、弱者男性の存在を隠している現状が問題視されている。

彼の経験は、仕事や家庭における男性の役割や期待に対する偏見を見直す必要性を示唆している。

「男たるもの働け」親に首を締められ、職場でも殴られ…弱者男性の生き地獄「DV被害、いじめ、パワハラの悲劇の話」

 弱者男性とは誰なのか。日本にとっての大きな問題であるのに、あまり注目されないその存在について、『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)を上梓した、「エッセイストのトイアンナ氏が当事者にインタビューしたーー。

 男性なら、働いて結婚し、女性を養うべきだ。

 そういう無意識の思い込みは、ないだろうか。

 政府の調査では、男性の2人に1人が「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と答えている。だが、誰もがそれを実現できるわけではない。30代男性の年収の中央値は正社員でも450万円 。非正規になればさらに下がる。そしてこの世には「どんな事情があろうとも、男たるもの働け」というプレッシャーがある。

 そのプレッシャーが生んだ、悲劇の話をしよう。

―― 荒川さんの幼少期について教えてください。

「小学校の頃は、ちょっと変わり者という感じの子どもでしたね。それでも小学校時代は何か親しんでもらえていたようですが、中学生になると変な奴って思われて、いじめられるようになりました。

 きっかけはたわいもないことです。私は絵を描くのが好きだったのですが、その絵を描いたノートを持って行って学校で描いていたら、変な奴扱いされて。ノートを取りあげられていじられるとか」

――ご家庭はどうでしたか。

「父親が怒りやすいタイプで、それがつらかったです。最近の父親は少し落ち着いてはいるんですけど、普段から手をあげるような人でした。たとえば、家のお手伝いとして、石油ストーブの石油を補充していたときのことです。僕が石油を、玄関先に少しこぼしてしまったんですよ。そしたら父親に蹴られました。ほかにも、家族で車に乗っているとき、車の天井部分を少し触っていたら、それを父親が見て2、3発殴られたことがあります。他のDV被害を受けているご家庭と比べたら、そこまでひどくないのかもしれませんが……」

――お話を伺っていると、むしろ、とてつもないDVの被害経験だと感じます。

「といっても、殴られたり蹴られたりした頻度はそこまで多くないですし、誕生日には何かものを買ってくれるような父ではありました。ただ……恩は感じるものの、正直苦手な相手ではあります」

――さらに、荒川さんは中学時代、いじめの被害に遭われたとのことですね。当時は、家族に頼れる状況だったのでしょうか。

「いじめがあったとき、親にも相談はしました。でも、自分が悪いと言われてしまって。絵を描くのが趣味だったんですが、お絵かきノートを持っていくのが悪いと言われて。それをやめろと言われました。

 結局、中学時代のいじめがおさまったのは、全然違う理由でした。当時話題になっていた自殺関連の書籍を図書館で借りて読んでいたんです。そうしたら、同級生から『もしかしたら自殺するんじゃないか』と思われたみたいで。それがきっかけで、いじめが収束したんです」

――そんな高校生活の苦労を乗り越えつつも受験を頑張り、大学に入学されたんですね。

「実は中学から全然勉強に身が入らなくって……。勉強を諦めたのが、高校1年の期末テストの頃でした。私自身としては結構頑張って勉強していたつもりだったのですが、母親からは不評で。『こんなんじゃだめだ』と言われ、やる気をなくして……。

 それから、全然勉強しなくなったんです。それでも、受験を全くしないとなると、やはり親から大変な目に遭わされると思ったんです。それで、中学時代から好きだった絵をやりたいと思って、大学はデザイン系を受験しました。試験も特に難しい試験もなく、助かりました。恐らくそのままだと就職できないだろうからちゃんと就職できるようにと、大学に行きました」