イラン大統領の事故死が中東情勢にもたらすもの

AI要約

2024年5月19日、イランのイブラヒム・ライーシ大統領らが乗ったヘリコプターが墜落し、死亡した事件。

事故で亡くなったイランの大統領や外相は地域紛争の調停や重要な交渉で活躍しており、イランにとって大きな損失となった。

イランでは大統領代行や選挙が行われることになり、最高指導者のハメネイ師が権限を持っている。

イラン大統領の事故死が中東情勢にもたらすもの

 2024年5月19日、イランのイブラヒム・ライーシ大統領などが登場したヘリコプターが、イラン北西部の東アゼルバイジャン州でのダム併用開会式典参加後に墜落・死亡した。

 搭乗者は、イブラヒム・ライーシ・イラン大統領、ホセイン・アミール・アブドラヒアン外相、マーリク・ラフマティ・東アゼルバイジャン州知事、アヤトラ・アリ・アル=ハーシム氏(同州最高指導者ハメネイ師代表者、イランの最高指導者を選出するムジュタヒド88名から構成される指導者選出専門家会議メンバー、タブリーズ市金曜礼拝のイマーム)。

■次期最高指導者の事故死

 ライーシ大統領は、85歳と高齢のイラン法学者統治の最高指導者ハメネイ師の最有力後継者だった。アブドラヒアン外相は次期大統領最有力候補で、レバノンのヒズボラ指導者ハサン・ナスラッラやイエメンのフーシ派や核条約の交渉やサウジアラビア王国の国交回復交渉など、重要な会議に参加していた。

 このヘリコプター事故で亡くなったイラン大統領と外相は、イラン外交や地域紛争の激化、沈静化、パレスチナ問題の成り行きをコントロールする重要人物だった。

 この2人の死亡は、イランにとっては2020年にアメリカ軍がイラン・イスラム革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官を殺害して以降の最も大きな損失だ。

 イラン憲法では現職の大統領が死亡した場合、第1副大統領が最高指導者の同意を得て50日間職務を代行し、その間に大統領選を実施することになっている。

 これに基づき、ムハンマド・モフベル第1副大統領がイラン大統領代行に任命され、ハメネイ師が2024年6月28日の選挙実施を指示した。

 イランの法学者統治制度では、最高指導者ハメネイ師は絶対権限を持っていて現行法の停止・廃止・失効ができる。

 亡くなった外相の代行はアリー・バーゲリー・カーニー外務省政務担当次官が当面務めることになった。アリー・バーゲリー外相代行はイラン側の核条約交渉団に参加していた。

 イランの核交渉団を率いたリーダーのサイード・ジャリリ最高安全保障委員会事務局長責任者を出し抜いて外相に抜擢された。外相は大統領令により任命されるため、モフベル第1副大統領の大統領就任後、アリー・バーゲリー外相を任命する大統領令が発令された。