つくる光景みせた讃岐うどん「体験価値」で大ヒット トリドールホールディングス・粟田貴也社長

AI要約

加古川市で焼き鳥屋を開業したトリドールホールディングスの粟田貴也社長の経歴に迫る。

故郷への思いや事業展開の歩み、お客様へのアプローチについて述べられている。

地元を訪れた際の感慨や、『源流』となる過去の出来事に触れている。

つくる光景みせた讃岐うどん「体験価値」で大ヒット トリドールホールディングス・粟田貴也社長

 日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2024年9月23日号では、前号に引き続きトリドールホールディングスの粟田貴也社長が登場し、「源流」である故郷の兵庫県加古川市を訪れた。

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 23歳で故郷の兵庫県加古川市で開いた焼き鳥屋1号店「トリドール3番館」は、なかなか集客ができなかった。苦闘1年余り、夜中のラーメン屋の賑わいから「深夜市場」をみつけて、客を引きつけた。

 2号店、3号店を持つと、違法駐車の一斉摘発から車での来店客が多いと知り、「焼き鳥屋は駅前で」の思い込みを捨て、「郊外市場」で出店を増やす。

 父の故郷・香川県の製麺所でみた、小麦粉から讃岐うどんをつくってゆでて出す過程を客が目の前でみる「体験価値」に気がつき、「丸亀製麺」で国内外の「体験市場」を掘り起こす。

 すべて、「客が本当は何を求めているのか」への答えだ。

 企業などのトップには、それぞれの歩んだ道がある。振り返れば、その歩みの始まりが、どこかにある。忘れたことはない故郷、一つになって暮らした家族、様々なことを学んだ学校、仕事とは何かを教えてくれた最初の上司、初めて訪れた外国。それらを、ここでは『源流』と呼ぶ。

 この8月、「トリドール3番館」や「丸亀製麺」の1号店を開いた加古川市を、連載の企画で一緒に訪ねた。粟田貴也さんが「客が本当は何を求めているのか」との視点の重要さに気づき、ビジネスパーソンとしての『源流』が流れ始めた地だ。

 JR加古川駅前の商店街は、店を開いた39年前は小さな商店が集まっていたが、多くの店が入れ替わり、再開発が進んで商業施設もできている。ただ、賑わいは昔のほうが感じた。駅前から歩いて2、3分、路地へ入ると、表情が一変する。「トリドール3番館」があった5軒長屋は姿を消し、駐車場になっていたが、いくつか古い建物が残っている。ここへくれば、やはり様々なことを思い出す。