【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる

AI要約

マセラティは新型グラントゥーリズモにガソリンエンジン車とフルEVを用意し、従来のスポーツクーペ路線を貫くことを示す。

新型グラントゥーリズモはデザイン面でも技術面でも先代の進化形であり、先代同様に美しくスポーティなビッグクーペを標榜する。

エンジン配置や駆動方式の変更を通じて、新型グラントゥーリズモは先代と同等のスポーティさと快適性を保持しつつ、最新技術を取り入れている。

【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる

マセラティというブランドを定義するモデルをひとつ挙げるなら、それはグラントゥーリズモだ。サルーンやスーパーカー、さらにはいまやSUVもラインナップしているが、スポーティさを備えたラグジュアリーな2+2のビッグクーペはほぼ常に存在したからだ。

現在はグラントゥーリズモ、過去には3500GTやセブリング、クーペなどと銘打ち、車名は一貫していないが、マセラティにとってその手のクルマは、ポルシェで言うところの911みたいなもの。SUVに正当性を与えるためにも、本流のスポーツクーペは必要なのだ。

その生き残りのため、マセラティは新型グラントゥーリズモにガソリンエンジン車とフルEVを用意した。もっとも彼らは、スーパーカーのMC20やSUVのグレカーレでも同じ戦略を取ろうとしているのだが。

フォルゴーレと呼ばれるEV版は、なかなか興味深い提案だ。3モーターと800Vシステムを用い、初期段階での試乗では魅力的な走りを味わえた。右ハンドル車の英国上陸が待ち遠しいが、今回は550psのV6を積むトロフェオをテストする。

美しいルックスとすばらしいV8を備えた先代グラントゥーリズモは、2007年から2019年まで現役を張った。さすがに排ガス規制が強化される中で自然吸気V8は生き残れなかったが、新型のデザインは先代の進化形であることが明白。かなりのロングノーズで、シルエットは流麗だ。

長いクラムシェルボンネットは、視覚的な効果も狙いのうちだ。表面積が3平方mもあるこのパネルを、マセラティはコファンゴと名付けた。イタリア語のコファーノ(ボンネット)とパラファンゴ(フェンダー)を合成した造語だ。

また、これはメカニカルレイアウトの結果でもある。グラントゥーリズモも、ソフトトップ版のグランカブリオも、用いるプラットフォームは完全新設計で、先代やSUVのグレカーレとはまったくの無関係とされるが、基本設計はアルファ・ロメオ・ステルヴィオがルーツだ。2017年に開発がスタートし、ガソリンエンジンとフル電動パワートレイン、両方への対応が図られた。

先代グラントゥーリズモと同じく、エンジンはフロントアクスルより後方に搭載する。しかしながら、最新のパワフルなGTの例に漏れず、四輪駆動を採用している。エンジンを後方へ寄せたため、フロントデフはエンジンの下ではなく前に配置し、ボンネットを低くすることが可能になった。電動版は、クラシックなデザインとドライビングフィールを変えないよう、バッテリーと3つのモーターをICEパワートレインと同じ位置に積んでいる。

MC20やグレカーレにも搭載されるネットゥーノこと3.0LツインターボV6は、珍しいプレチャンバー燃焼システムを採用。グラントゥーリズモのそれは、2992ccのウェットサンプ版で、折りたたみ式タペットを介して右側シリンダーを休止させることができる。2仕様のチューニングが用意され、490psのモデナと550psのトロフェオを設定。今回のテスト車は後者だ。

このパワーを受け止め、また快適性を維持するため、全車エアサスペンションとアダプティブダンパーを装備。リアデフはLSDで、モデナは機械式、トロフェオは電子制御式となる。サスペンションと電子制御LSD、スタビリティコントロールなどはヴィークルドメインコントロールモジュールと呼ばれるシステムが統合制御し、処理速度を高めている。この頭脳は、マセラティの自社開発品だ。