まだ儲かるはず…己の欲に負けた結果「300億円」の儲けが幻に。“最後の相場師”の失敗に学ぶ「投資の心得」【株式投資の金言】

AI要約

株式投資において、欲や妬みに注意しなければならない理由を示す失敗談を紹介。

是川銀蔵の株取引の失敗から学ぶ欲望と現実の関係。

ピーター・リンチの警告:他人の成功に焦点を当てることで、自身の失敗を生む可能性。

まだ儲かるはず…己の欲に負けた結果「300億円」の儲けが幻に。“最後の相場師”の失敗に学ぶ「投資の心得」【株式投資の金言】

「お金」と「欲・妬み」にまつわる失敗談は数多く、投資においても当然例外ではありません。本記事では『株式投資 100の金言』(さくら舎)から一部抜粋し、著者の桑原晃弥氏が、「最後の相場師」と呼ばれる日本の投資家・是川銀蔵(これかわぎんぞう)や伝説的ファンドマネジャー・ピーター・リンチの言葉を基に、欲や妬みに注意しなくてはならない理由をご紹介します。

1983年に高額納税者番付で日本一になった是川銀蔵は、時に手痛い失敗も喫しています。

1978年、是川は赤字会社で、株価も100円台と低迷していた同和鉱業株を買い進めます。市況の低迷さえ脱すれば必ず回復するという確信を持っての買いであり、やがて是川の読み通りに株価は上昇、300円を超え、400円台に入ります。

当初、是川は500円にまで株価が上がれば持ち株の7割以上を手仕舞うつもりでしたが、株価は500円を超えて、さらに上昇します。是川は当初の目論見の500円を800円へ、さらに1,000円へと修正します。

株価は900円となり、もしこの時点で所有している株をすべて売っていれば、是川の手元には300億円のお金が転がり込んでいたことになりますが、是川は1,000円どころか1,500円までいくのではと考えて売ろうとはしませんでした。「まだ、まだ」と思う心がそうさせたわけですが、現実は「もう」でした。

株価は下がり始め、是川は慌てて売ろうとしますが、6,000万株もの株を簡単に売ることはできず、手元には株を買い始めた時と同額の30億円だけが残ることとなります。

現実は人間の希望観測通りにはいきません。『本間宗久相場三昧伝』が言うように、「まだ、まだ」は己の欲が言わせるものであり、現実は既に「もう」のことが多いのです。

本や雑誌、ユーチューブなどで自分の驚くほどの成功を吹聴する人がいます。

「元手100万円がまたたく間に1億円に」「何もしなくても毎月50万円が入ってくる」

こんな話ばかりを聞かされると、「本当にそんなことができるのかな」と疑いながらも、「もしかしたら自分にもできるかもしれない」という気持ちになる人もいるはずです。

実際、株式市場には誘惑が山ほどあります。ほとんど無名の企業に投資したお金が驚くほどの高倍率で戻ってきたという成功譚を聞いていると、つい「いつか自分も」となりがちです。

そこまではいかなくとも、ある人が買った株が「何倍になった」「いくら儲かった」などという話を耳にするたびに、何だか自分が損をした気分になるものです。実はそこに落とし穴があります。

ピーター・リンチは言います。

「実際には何も損をしていないのにミスを犯したと思い込めば、本当に多額のお金を失うミスを犯す羽目になるだろう」

投資の世界には、たしかに驚くほどの儲けを手にする人がいます。何だか自分1人が損をしたような気分になるかもしれませんが、それは「本当の損」ではありません。人の成功をうらやみ焦ると、「架空の損」が「本当の損」につながることになるのです。

桑原晃弥

経済・経営ジャーナリスト