「史上最悪の株価暴落」直前の日銀利上げが、実は「日本経済を救った」と言えるワケ

AI要約

日銀による7月の利上げは、円高・株安をもたらした張本人だと評判が悪い。

利上げの決定後、円高・株安が続き、株価急落も引き起こした。

しかし、利上げ前から円高・株安の動きがあり、原因は他にもある。

「史上最悪の株価暴落」直前の日銀利上げが、実は「日本経済を救った」と言えるワケ

日銀による7月の利上げは、円高・株安をもたらした張本人だとすこぶる評判が悪い。

たしかに、利上げが決まったのが7月31日、そこから円高・株安が続いて8月5日に87年10月のブラックマンデーを超える株価の急落が襲った。

政府の反対を押し切って利上げを強行し、直後に景気が後退してしまった2000年8月のゼロ金利解除になぞらえて、利上げは失敗だったとの評価が出てくるのは無理からぬところだ。円高・株安といった金融市場の混乱が続き、景気の悪化につながってくるようなことになれば、そうした見方はさらに強まる。

また、ブラックマンデーを超える株価急落を引き起こしてしまったことで、日銀はこれ以上の利上げを封印せざるを得なくなってしまった。つまり、ゼロ金利を解除するための最初の利上げを焦ったばかりに、その後の利上げをあきらめざるを得なくなったとの評価が出ているのも頷ける。

こうした日銀犯人説、利上げ失敗説は世の中に受け入れられやすいが、やや短絡的だ。

そもそも利上げ前から、円高と株安は進んでいた。

まず、直近の円安のピークは7月3日(161.77円、東京市場17:00)であったが、利上げの前日となる7月30日には154.90円まで円高が進んでいた。そして、翌31日の利上げを受けてさらに150.91円まで円が上昇し、最近は140円台前半での推移となっている。

また、日経平均株価は7月11日に史上最高値を更新して42,224.02円(終値)まで上昇したが、利上げがあった31日には39,101.82円まで下落していた。この日は円高が進んでいたにもかかわらず、株価は前日よりも上昇して終わったのだが、8月1日以降は大幅な下落が続き、8月5日にブラックマンデーを超える株価急落に見舞われることになる。

日銀の利上げが事前にあまり予想されていなかったこともあり、円高・株安を加速する材料となったのは間違いない。しかし、その前から円高・株安が始まっていたことを考えると、日銀の利上げ以外にその原因があると考えるべきだ。

円高・株安の背景として、米国の景気後退懸念の高まりが、米FRBの利下げ観測を伴いながら、ドル安と世界的な株安をもたらしていた。また、日本もその流れに巻き込まれるだけでなく、金利が低い円で資金を調達して外貨で運用する円キャリートレードの巻き戻しという日本固有の問題も発生し、円高・株安をもたらしていた。

仮に日銀が利上げしなくても円高・株安はさらに進んでいただろう。