生成AI対応の最新iPhone 価格は据え置き、その理由とは

AI要約

アップルが初めて独自開発した生成AI「アップルインテリジェンス」に対応した最新モデル「アイフォーン16」が発表され、価格据え置きの値付け戦略が注目された。

アイフォーン16はAIを活用した新機能を最大限に生かすために開発され、最新の画像処理半導体や新機能を搭載。しかし、アップルインテリジェンスの本格サービスは10月以降であり、使用可能な機能は未完成の試験バージョンに限定される。

日本語対応は来年になるとしても、既にデバイスに対応しているユーザーも多く、価格据え置きの新モデルは古い機種からの買い替えを促す可能性が高い。

生成AI対応の最新iPhone 価格は据え置き、その理由とは

 米アップルが9日発表した「iPhone(アイフォーン)」の新シリーズ「アイフォーン16」は、全機種の価格を前モデル「アイフォーン15」から据え置いた。アップルが独自開発した初めての生成人工知能(AI)「アップルインテリジェンス」への対応機種として注目されたにもかかわらず、価格を上げなかった理由とは何か。

 「アップルインテリジェンスのため、ゼロから設計した。刺激的な新時代の幕開けだ」。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は9日の発表イベントで、アイフォーン16の新機能の魅力を強調した。

 アップルインテリジェンスは、アップルが6月に発表した生成AIを使った新サービスだ。

 用途に合わせた自動文章校正や独自の絵文字作成機能に加え、多くの便利な機能を備えている。例えば、撮影済みの写真の中から「赤いドレスを着て踊っている写真」のような曖昧な条件でも探し出してくれる。音声アシスタント「Siri(シリ)」に「土曜日のバーベキューの写真を送っておいて」と話しかければ、アドレス帳に登録されている友人に目的の写真を送ってくれる。

 アイフォーン16は、これらの新機能を最大限に生かすために作られた初めてのモデルだ。前モデルに比べて最大40%速い画像処理半導体(GPU)を開発するなど、大量の情報処理を速くこなせる性能を持たせた。ワンタッチでカメラ撮影機能が起動するサイドボタンを新設するなど、AI以外でも改良を加えている。

 それにもかかわらず、発表された価格は普及モデルから上位モデルまで全て1代前のアイフォーン15と同じだった。前機種(アイフォーン14)よりも最大2万5000円値上げしたアイフォーン15とは対照的な値付け戦略だ。

 背景にあるとみられるのが、最大の魅力であるアップルインテリジェンスのサービス開始が新機種発売に間に合わないことだ。20日に発売されるアイフォーン16で新機能が実際に利用できるのは、アイフォーンの基本ソフト(OS)がアップデート(更新)される10月に入ってからになる。

 しかも、更新時点で使えるサービスは試験バージョンのみ。米紙ワシントン・ポストによると、新機能は技術的に未完成で「約束された全ての機能が提供されるのは、そこから更に数カ月先の可能性がある」という。

 日本でアップルインテリジェンスを楽しみにしているユーザーが新機能に触れられるのは更に後になる。10月は英語バージョンのみで始まり、日本語など他の言語でのサービス提供は来年になるとアップルが説明しているためだ。

 とはいえ、現時点でアップルインテリジェンスに対応しているのは、アイフォーン16以外ではアイフォーン15の上位モデル「プロ」と「プロマックス」のみ。新しいモノ好きのユーザーにとっては、前モデルと同じ価格に設定された新モデルが魅力的に映る可能性がある。

 市場では「『アップルが開発したAIサービスをいち早く試したい』と思うユーザーは少なくない。古くなったアイフォーンの買い替えが進む」(米ITアナリスト)との見方も出ている。【ワシントン大久保渉】