【MotoGP第13戦サンマリノGP】Moto2小椋藍選手「完璧なレース」で今季3勝目。故・加藤大治郎選手の日章旗とともに
小椋藍選手が右手の怪我を抱えながら、サンマリノGPで優勝し、チャンピオンシップのトップに立つ。
怪我を抑えつつも速さを維持し、レース展開を見極めてオーバーテイクを成功させる。
小椋選手は次戦に向けて、スピードを活かした戦略でチャンピオン獲得を目指す姿勢を示す。
Moto2クラスに参戦する小椋藍選手(MTヘルメット - MSI)は前戦アラゴンGPを8位で終え、チャンピオンシップのランキングトップとの差を12ポイントに縮めてサンマリノGPを迎えました。小椋選手はオーストリアGPの転倒で右手を骨折しており、アラゴンGPでは痛み止めを使用してのレースでした。
サンマリノGPでも、小椋選手の右手の状態はまだ100パーセントではありませんでした。初日を終えた小椋選手は、「まだ忘れてバイクに乗れるほど、痛みはなくなっていないです。といっても、ほんとに痛くて攻めたりブレーキングができないわけじゃない」と語っていました。
ただ、土曜日から右手の状態が改善方向に進みました。予選Q2ではフロントロウ(1列目)、3番手を獲得。土曜日以降も痛み止めを使用しませんでした。痛み止めを使用すると、少なからず感覚が変わります。自分の走りを考慮し、痛みよりも感覚を重視してレースに臨むことに決めたのです。
決勝レースでは、レース序盤から2、3番手につけ、レース中盤以降はトップのアロン・カネト選手(ファンティック・レーシング)を追走すると、残り4周でカネト選手をパス。そのままトップを守って優勝を飾りました。
「トップと同じ場所にいれば、トップと同じタイヤの減り方か、それよりもセーブができますし、相手の走りも見られます。レース展開的にはうまくいったかなと思います」
小椋選手はレース後、そう言ってレースを振り返りました。優勝を決定づけた残り4周のオーバーテイクも、的確なタイミングでした。
「(トップだったカネト選手を)最後の2周などで抜くと、相手も最後の力を振り絞ってまたやり返される可能性があるな、と考えました。自分の方がペースがあるようなら、残り4、5、6周くらいで前に出て、少しプッシュして、ギャップを作るほうが利口かな、と思ったんです」
サンマリノGPで小椋選手が優勝し、ランキングトップだったセルジオ・ガルシア選手(MTヘルメット - MSI)が12位で終えたことで、小椋選手がランキングトップに浮上しています。ランキング2番手に後退したガルシア選手との差は9ポイントです。ガルシア選手は負傷を抱えており、24番手からのスタートでした。
「グリッド順からして僕がポイント差を縮める、逆転するチャンスはすごくあったので、それももちろん視野に入れながらレースをしました。でも、レースに集中して自分が良いポジションでゴールすれば、それはおのずとついてくるものなので」
ランキングトップに浮上した小椋選手に、チャンピオン獲得に向けたチャンピオンシップの戦い方には何が大事だと考えているのか、と尋ねました。すると、小椋選手はこう答えました。
「金曜、土曜のレースまでの組み立てと、それをできる限り毎戦やる、ということですね。チャンピオンシップ(を考えなければならない段階)、となってくればくるほど、スピードがあればあるほど、抑えて走ることもできます」
「例えば自分がぶっちぎりで速かったら、抑えて走っても2位になれます。スピード次第だと思うんです。自分が有利になるように、僕はできるだけそういうところを詰めていく。そういうレースをしていけたら良いかなと思います」
速さがあればあるほど、選択肢を多く持つことができます。今回のレースは、まさにそんなレースでした。
レース前、「今回は表彰台で終わることができれば」と考えていましたが、小椋選手には速さがありました。レース中に「優勝」をターゲットに切り替えて攻めることができたのです。
小椋選手は、パルクフェルメで「完璧なレースでした」と笑顔を見せました。めったに聞けない小椋選手の「完璧」という言葉に、今回の優勝の重さが感じられました。
次戦のMotoGP第14戦エミリア・ロマーニャGPは、2戦連続で同じサーキット、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで、9月20日から22日にかけて行なわれます。
■Moto2クラスとは……
Moto2クラスは、トライアンフ「ストリートトリプルRS」の排気量765ccの3気筒エンジンをベースに開発されたオフィシャルエンジンと、シャシーコンストラクターが製作したオリジナルシャシーを組み合わせたマシンによって争われる。タイヤは2024年よりピレリのワンメイクとなった。クラスとしてはMotoGPクラスとMoto3クラスの中間に位置する。