レンジローバー・スポーツ 詳細データテスト 増した円熟味 影を潜めたダイレクト感とシャープな走り

AI要約

1970年に誕生したレンジローバーの歴史と、新型レンジローバー・スポーツSVの登場について述べられている。

新型SVは従来のSVRとは異なるアプローチで、レンジローバーの広い魅力を追求している。

エンジンやサスペンション、外観など、新型SVの特徴や性能について詳細に説明されている。

レンジローバー・スポーツ 詳細データテスト 増した円熟味 影を潜めたダイレクト感とシャープな走り

ローバーのエンジニアだったゴードン・バッシュフォードとスペン・キングが元祖レンジローバーを1970年に生み出したとき、このクルマの重要性がいかに高いか想像できなかった。ランドローバーブランドのさまざまな所有者たちは、その後50年にわたり、レンジローバーの名のポテンシャルを探り、今なおJLRがそれを続けている。

今週のテスト物件は、新型のレンジローバー・スポーツSVだ。物欲を超そそる、レンジローバー・スポーツのトップグレードが多少考え方を変えてきたもので、2014年のペブルビーチでデビューした先代のSVRからほぼ10年ぶりの代替わりだ。

ランドローバーのエンジニアたちが494RSと呼ぶ先代SVRは、ビジュアルもサウンドも全開で、JLRのスペシャルヴィークルオペレーションの象徴的なモデルであり、パフォーマンス方面のピークでもあった。ジャガーのワイルドなスペシャルモデルであるプロジェクト7ロードスターやプロジェクト8セダンに数年先駆けて登場し、それらとともにJLRが放つポルシェやメルセデスAMGの領域へ踏み込んだことを示したものでもある。

しかし、新型SVは、違う方向性を目指しているようだ。オンロードでのパフォーマンスやハンドリングを最優先事項とするのではなく、もっと広い分野で魅力を高めたレンジローバーとすることを狙っている。レンジローバーの歴史に名を残すハイパフォーマンスモデルとは、異なるエンジニアリングを持ち込み、洗練性やラグジュアリーさ、レンジローバーらしい引き算のデザインを際立たせようとしているのだ。

はたして、この多方面で究極を追求したクルマは、スーパーSUV市場で存在感を示すことができるのだろうか。

このクルマは、レンジローバー・スポーツの新たなトップパフォーマンスモデルだ。レンジローバーのSVは、動力性能に特化したのではない超高級仕様だが、それとはSVの名が示すものが異なる。ただし、先代SVRのオーナーは、おそらく後退したように思えて驚くことだろう。

一見すると、新型SVは先代SVRより控えめだ。大きく開いたフロントのインテークはなく、劇的にフレアしたホイールアーチも、目に焼き付くようなボディカラーも見られない。ただし、よく観察すれば、4本出しテールパイプや空力パーツの存在に気づくはずだ。

はっきり言えば、JLRのデザインティームは、これまでのSVRよりおとなしく、通常のレンジローバー・スポーツのデザインテーマを残したかった。BMW XMやランボルギーニ・ウルス、メルセデスAMG G63といった競合車種のエクステリアが節度に欠けるものであることを考えれば、それらとは違う、ややリスクのあるアプローチだ。

ビジュアルは、メカニズムの改修を声高に訴えてはいないが、これは間違いなく意図的なものだ。英国仕様のレンジローバー・スポーツでは、唯一のV8搭載モデルで、積まれるのは先代BMW M5譲りのS63型4.4Lツインターボ+マイルドハイブリッド。最高出力は635ps、最大トルクは76.5kg-mに達する。先代SVRのスーパーチャージャーユニットより十分にアップしているが、700psオーバーが当たり前のハイパフォーマンスSUVが跋扈する中では目立たない数字だ。

トランスミッションは8速ATで、センターデフとリア電子制御トルクベクタリングLSDを介して、駆動力を四輪へと送る。

しかし、もっとも大きく手が入っているのはアクスルやサスペンション、そしてステアリングだ。サブフレームは新設計で、ワイドトレッドとよりアグレッシブなホイールジオメトリーを生む新たなサスペンションリンクを採用する。マルチチャンバー式エアスプリングはスペシャルチューンで、通常モデルより25mmローダウンしている。

それらと合わせて、通常モデルのアダプティブダンパーとアクティブスタビライザーは、ゲイドンいうところの6Dダイナミックこと、インターリンク式のアクティブダンピング油圧系に置換。ピッチとロールのコントロールを改善しつつ、重量を抑える。四輪操舵は通常モデルからのキャリーオーバーだが、フロントにはクイックになった新型ステアリングラックを採用した。

鋳鉄ブレーキと23インチ鍛造ホイール、オールシーズンタイヤが標準装備。全天候型の使い勝手やオフロード性能をもたらすタイヤを履いていてさえ、旋回時の横Gは先代SVRより最大で25%近く増しているというのが公式発表だ。

テスト車には残念ながら未装着だったが、オプションではレンジローバー初のカーボンホイールとカーボンセラミックブレーキも設定。バネ下重量は、じつに76kg削減できる。2485kgという公称重量は、先代SVR比で150kg程度の増加だ。テスト車の実測値は、燃料をタンクの2/3まで入れて2546kgだった。