早期・希望退職募集が急増、対象人員は3・5倍の7100人超に 上場企業の1~8月

AI要約

早期・希望退職を募集する上場企業が急増しており、対象人員は前年同期の3・5倍に達している。製造業を中心に、不採算事業の整理を急ぐ企業が増えている。

上場企業のうち、好業績の企業も構造改革を進めている一方、悪化した企業も目立つ。人手不足や転職市場の活況が早期・希望退職につながっている。

業種別では、情報・通信業での早期退職募集が増加傾向にあり、DXの促進や新型コロナウイルス禍の影響が要因とされている。

早期・希望退職募集が急増、対象人員は3・5倍の7100人超に 上場企業の1~8月

早期・希望退職を募集する上場企業が急増している。東京商工リサーチが公表した2024年1~8月に早期・希望退職募集が判明した上場企業は41社(前年同期28社)で、すでに23年通年に並んだ。対象人員は7104人(同1996人)と前年同期の3・5倍に達し、23年通年(年間3161人)の2倍以上となった。製造業を中心に、円安の恩恵による好業績のうちに不採算事業の整理を急ぐ企業が増えたことが背景にあるとみられる。

■転職活況が退職促す面も

上場区分は、東証プライムが28社で全体の68・2%を占めた。また、黒字企業が24社(構成比は58・5%)で、好業績のうちに構造改革に取り組む動きが強まっている。

一方で、すでに収益が悪化し、大規模な人員削減に動く企業も目立つ。直近では国内社員数の約2割に当たる700人を募集する住友ファーマや、液晶パネルを生産している堺工場の従業員を対象に約500人を募集したシャープが代表例だ。

また、1年間に複数の募集を実施したのは、23年はTVチューナーなど映像関連機器製造のピクセラだけだったが、24年は3社(東北新社、ワコールホールディングス、ソニーグループ)に上った。

東京商工リサーチは「幅広い業界で人手不足が顕在化して転職市場が活況であり、従業員が早期・希望退職に応じやすい環境になっている」と説明する。

■情報・通信産業で増加傾向

業種別では、シャープなど電気機器が9社(前年同期4社)だった。

次いで、今年2回目の募集を実施する東北新社など情報・通信業が7社(同6社)。工場の停止に伴い募集を発表したワコールホールホールディングスなど繊維製品(2社)、井関農機など機械(2社)、卸売業(0社)、サービス業(2社)が各3社。食料品(1社)、化学(1社)、医薬品(3社)、その他製品(0社)が各2社となった。

東京商工リサーチは「DX(デジタルトランスフォーメーション)化の促進などで、新型コロナウイルス禍で盛り上がった需要が一服した情報・通信業の早期退職募集が増加傾向にある」と分析している。