EV化のハードルが高いいま大型トラックで「CNG車」が注目を集める! タクシーで主流のLPGでもない「天然ガス」のメリットとは?

AI要約

LPGとは液化石油ガスのこと。第2次世界大戦直前に初めて導入され、タクシー業界で広まった。一方、CNGはオイルショック後に注目され、天然ガスとして環境に優しい代替燃料として期待されている。

LPG車はタクシーで主に使用され、主な特徴は価格の安さと供給体制への適合性。一方、CNGは埋蔵量の豊富さや軽量化が可能な点が長距離トラックの燃料として有望視されている。

CNGの配管網整備や大手4社の設備を活用すれば、燃料供給網の整備も夢ではない。EVの発展に対しても、CNGは大型トラックの燃料として重要な役割を果たす可能性がある。

EV化のハードルが高いいま大型トラックで「CNG車」が注目を集める! タクシーで主流のLPGでもない「天然ガス」のメリットとは?

 LPGとは液化石油ガスのこと。主成分がプロパンやブタンなどであることから、一般にプロパンガスと呼ばれることもあるが、LPGのPはPetroleumの略で、石油を表す単語である。これに対してCNGとは圧縮天然ガスのことだ。天然ガスは都市ガスとして広く使用されているおなじみの燃料で、主成分のメタンにエタンやプロパンなどを含む化石燃料の一種である。

 日本でLPG自動車が初めて導入されたのは、第2次世界大戦直前のことだ。戦争が始まると深刻な石油不足の発生が懸念されたため、代替燃料として活用されるようになったのだという。

 戦後になると、高度成長期にタクシー業界がLPGの優位性に目をつけて導入を開始した結果、それが期待どおりであったことから、タクシーにはLPG車が使用されるようになっていった。

 CNG自動車は、それよりかなりあとになってから導入され始めている。きっかけは1973年と1978年に起こったオイルショックだ。ガソリン・軽油に替わる自動車用燃料が模索されるなかで、原油に比べて埋蔵量が多く、採掘可能地域が広い天然ガスに注目が集まった。

 このころ、都市ガスが天然ガスに切り替えられたことや、のちに着目される地球温暖化問題(CNGはガソリン・軽油よりもカロリー当たりのCO2排出量が少ない)にも貢献するため、自動車用の石油代替燃料として期待されるようになったのだ。

 LPG車・CNG車はともにガソリン車・ディーゼル車の内燃機関を改造することで、簡単に流用が可能になるという特性をもつ。すなわち、EV(Electric Vehicle)や燃料電池車のような内燃機関車両とまったく違う機構が必要になるわけではないのだ。また、エンジン出力・走行性能においても遜色がない。このことが、比較的簡単に導入を実現できた要因といえよう。

 現在普及しているLPG車はタクシーがほとんどで、それ以上の広がりは見られない。これは以下のようなLPGの特性や燃料供給体制がタクシーの運行環境に適しているからであろう。

■人や軽い荷物しか乗せないのでガソリンと同等の性能があればよく、価格がガソリンよりも安い

■基本的に営業地域が限られているので、それに対応可能な燃料供給網があればよい

■タクシー専用車両が多く、カーメーカーの段階でLPG仕様にできるから、車両の導入・維持コストが抑えられる

 これに対してCNGには以下のような特性があり、長距離トラックの燃料としても十分に期待ができる。

■世界的に埋蔵量が豊富な上に埋蔵地域が広いので、世界情勢に変化があっても安定した供給が可能

■LPGよりも比重が軽い上に、液化(Liquid)せずに圧縮(Compressed)しているので、燃料タンクを工夫するなどして燃料の搭載重量を軽くすることが可能

■すでに国内には都市ガスの配管網が設置されているため、条件が整えばタンクローリーを使用せずに燃料供給施設にガスを送ることが可能

 LPガスは全国で500社ほどの会社が扱っているが、多くは地域や都道府県単位で営業をしており、ユーザーへの供給はタンクをトラックで配送する形式をとっている。これに対して都市ガスは、大手4社が大規模設備を有し、ほぼ全国を網羅しているという特性を持つため、燃料供給網をガソリンスタンド並みに引き上げることも夢ではない。

 環境に優しくエネルギー効率のよいEVの開発が急ピッチで進んでいるものの、大型トラックのEV化にはまだまだ課題が多い。CNGがトラックの次世代燃料として有望視されるのは、こういった背景があるからであろう。