株のプロが教える「買っていい割安株、買ってはいけない割安株」決定的な1つの差

AI要約

株式投資で重要な財務内容の悪さについて警告し、業績と財務の違いを明確に説明しています。

さまざまな企業のバランスシートを例に挙げ、財務内容の見方を具体的に示しています。

業種ごとに適切な自己資本比率が異なることを説明し、その重要性を強調しています。

株のプロが教える「買っていい割安株、買ってはいけない割安株」決定的な1つの差

 個人投資家の間で大きな支持を集めるベストセラー『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』、待望の続編『株トレ ファンダメンタルズ編』が発売された。「この株は売り? それとも買い?」「どっちの株を買う?」投資シミュレーションの感覚でクイズを解くうちに株の知識が自然と身につく1冊だ。前作ではチャート分析がテーマだったが、今作では業績や財務の読み方をわかりやすく解説する。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。本稿では本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

● こんな株は絶対に買ってはいけない

 株式投資で、絶対やってはならないことがあります。財務内容の悪い株を買うことです。

 業績は変動します。今期悪くても、来期は良くなるかも。だから、業績が悪くて株価が下がっている時は割安に買うチャンスかもしれません。

 ところが、財務内容は簡単には変わりません。財務がひどい会社は、少しくらい業績が良くなっても財務内容は悪いまま。最悪、破綻してしまうと、株式の価値はゼロになることもあります。

 だから、業績の悪い株を買うのはOKでも、財務内容がひどい会社を買うのは絶対ダメなのです。これは、株式投資で必要な最低限の知識です。

● 『株トレ』のクイズに挑戦!

 以下3つのバランスシートは、大手自動車メーカー、大手テーマパーク運営会社、大手銀行のものです。

 (1)K社、L社、M社は、それぞれどれ?

 (2)この中に、バランスシートを見ただけで「財務内容に重大な問題があるので投資すべきでない」と判断できる会社はありますか?

● 正解は…

 (1)K社は銀行、L社は自動車メーカー、M社はテーマパーク運営会社。

 (2)「投資すべきでない」と判断できる会社はありません。

● 銀行業は自己資本比率10%でも財務に問題なし

 K社のような銀行業では、資産に貸出金、負債に預金が入ります。

 ところで、多数の店舗を持つ大手銀行で、有形固定資産(建物や土地)がたった4%しかないのは変だと思いませんでしたか?

 実はまったく変ではありません。確かに店舗資産は大きいですが、それをはるかに上回る巨額の貸出金や預金があるので、有形固定資産は比率にすると小さくなります。

 また、K社は自己資本比率が10%しかないので「財務に問題あり」と思った方はいませんか?

 銀行業は、BIS基準(国際的な自己資本規制)で計算した自己資本が8%を超えていれば良いとされます。

 国内だけで業務を行う銀行に対する国内規制では自己資本比率4%以上で良いことになっています。

● L社は自動車メーカー、M社はテーマパーク運営会社

 L社の流動資産(50%)は流動負債(35%)より多く、自己資本比率が35%あるので、財務に問題はないと考えられます。

 M社のようなテーマパーク運営会社は現金商売。売掛金や受取手形はほとんどありません。

 保有する資産は有形固定資産(機械設備、建物、土地)がほとんどです。

 流動負債(15%)を上回る流動資産(30%)を有し、自己資本比率は60%と高いので、財務は良好と考えられます。

● 適切な自己資本比率は業種によって異なる

 自己資本比率だけで財務の良し悪しは判断できません。業種によって適切な比率が異なるからです。

 金融業は自己資本比率10%でも、不良債権が多くなければ問題なし。ただし、たとえば製造業で自己資本比率が10%しかなかったら、財務は厳しいと見るべきです。

 (本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)