学力だけで活躍でき、幸せになれる? 人生を切りひらくアプローチ「SEL」とは

AI要約

学力を高めるための努力をするだけではなく、社会で活躍するための教育や機会提供が不足している現状がある。

子どもたちの自己実現力や社会への適応力が低下している背景には、学校や家庭、コミュニティーが閉じられ、個人情報の保護やセキュリティーが強化されていることがある。

このような状況の中で、子どもたちは社会やコミュニティーを理解し、自ら人生の道を切り拓く力をどう身につけていけば良いのか悩んでいる。

学力だけで活躍でき、幸せになれる? 人生を切りひらくアプローチ「SEL」とは

学力をつけるだけで社会で活躍でき、幸せになれるのか?

多くの大人はノーと言うだろう。しかし現実には、子どもを進学校に入れて、少しでも良い大学に入れたいと思う親は多い。

学力を高めるための努力はする。しかし学力以外の社会で活躍するための教育や機会提供は出来ているだろうか。学力もあり、かつ社会で活躍できる人材となるためにはどうしたらいいのだろうか。

『世界標準のSEL教育のすすめ 「切りひらく力」を育む親子習慣』を最近出版した教育企画・コンサルティング会社「roku you」の下向依梨(しもむかい・えり)・代表取締役に話を聞いた。(横田アソシエイツ代表取締役/横田浩一)

多くの大学生のキャリア相談にのっている筆者の課題意識は、「優等生だけれども、自分で本当にやりたいことを見つけることができない、進路を選択することができない学生が多い」ということだ。

偏差値的には勝ち組。親の言うことを素直にきいてきた優等生たちで、世間的にはとっても「良い子」たちだ。

しかし、大企業に一生勤めるということが良いという神話が崩れ、人生のキャリアの価値観が起業や転職など多様化していくなかにおいて、どうやって自分の進む道を選択していったらいいのかがわからない。

すなわち、学力は高いけれど、自分で自分の人生を切りひらく力が学力に比べて相対的に高くない学生たちが多数いるように感じる。

背景にあるものは何か。

学校や家庭がどんどん閉じられてきている。コミュニティーも小さくなり、閉鎖的になっている――下向さんはそう指摘する。

下向さんが暮らす沖縄でも、特に新興住宅街ではそれは進んでいるという。地域の祭りがない、地域の人がばったり出会うカフェなどがない、といったことも、今では珍しくなくなった。

学校と家庭や社会が連携する動きも出てきているものの、まだまだ一部だ。家族が少人数になり、自宅のセキュリティーも厳しくなるばかり。個人情報の保護が進み、アレルギーの問題などもあって、今の子どもたちは友達の家に遊びにいくことが減っているという。

そんな現状の中で「視野を広げろ」と言われても、子どもたちはどうすればいいのかわからない。探究学習の時間に「社会課題を考えよう」といわれても、「社会って何?」と戸惑ってしまう子どももいる。

同一性の高い集団のみで生活しているので、コミュニケーションスキルを向上させる機会がなく、社会やコミュニティーを体や本能で理解できない子どもが増えているのも当然だろう。