メルカリが爆速で「新規ユーザー数百万」を獲得するワケ、「循環型金融」の威力とは
メルカリは2300万人の月間利用者数を誇るフリマプラットフォームで、フィンテック事業に注力している。
売ると買うの循環を活性化させるために、独自カードや暗号資産の売買サービスを展開しており、顧客の行動データを活用している。
メルカリの狙いは売買循環の滞りを解消し、与信プロセスを通じて購入と販売のタイミングを最適化することにある。
月間利用者数約2300万人に上る巨大フリマプラットフォームを運営するメルカリが、フィンテック領域での事業拡大に注力しています。売上金でチャージできる独自カードや暗号資産の売買サービスは、開始直後から順調に成長。「売る」と「買う」の循環に注力し続けてきたメルカリが金融分野に乗り出したことには、どのような狙いがあるのでしょうか。利用者の行動データを基にした独自与信の取り組みなどについて、メルカリ 執行役 SVP of Japan Region(日本事業責任者)の山本真人氏に聞きました。
メルカリが運営するマーケットプレイスは、Amazonのように一般利用者の視点でモノを「買う」ことに特化した他のプラットフォームと違い、「売る」ことも行える点に特殊性があると考えています。
メルカリの月間利用者数は約2300万人。ただし、我々の調査によれば、その外側には、出品したいという気持ちがありながら、まだ出品していない方が3610万人ほどいると見込んでいます。出品者側には、拡大の余地が広がっているのです。
メルカリのフィンテック事業は、あくまでこうしたマーケットプレイス事業とのシナジーを重視して推進しています。
2022年末、アプリで利用と管理が完結するクレジットカード「メルカード」の提供を開始しました。2024年6月の決算時の発行枚数は340万枚を超え、非常にスピーディーに伸びています。
もう1つのフィンテック領域の柱として、メルカリアプリでビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を売買できる「メルコイン」を2023年3月にスタートしました。
こちらも2024年5月の時点で利用者数220万人を突破するなど、カードに劣らない異例の伸び方となっています。
このように複数のプロダクトが一気に伸びている理由の1つは、メルカリでの「本人確認(e-KYC)」さえできていれば、いくつか画面遷移をするだけでサービスを申し込める点にあります。
とはいえ大切なのは、単にカードやコインの枚数を増やすことではなく、売ると買うの「循環」が滞るポイントを解消することです。「売りたいものがまだ売れていないから、買いたいものが買えない」、あるいは「今売るものはないけど、買いたいものがある」ということはよくあります。
そこで当月の利用代金を「翌月」にまとめて支払えるメルペイスマート払いでは、与信のプロセスを間に入れることで、先に買って、後になってから売れたものをベースに精算できるようにしています。売買の循環を成立させながら、売ると買うのタイミングを非同期にするわけです。
逆に、「売るものはあるけど、特に買いたいものがない」というときもあります。売上金を寝かせること自体が悪いわけではありませんが、売買の循環という意味では流れが一度止まってしまいます。
そこで、買いたいものが特にない場合に、売上金で暗号資産に投資できるようにしたのが、メルコインです。カードやコインの枚数をそれぞれ別々に伸ばそうとしているのではなく、相互的な連動性の中で全体を拡大させることが私たちの目標です。