ハンマーで叩き壊される日本車! 80年代のジャパン・バッシングと、白人貧困層出身「副大統領候補」の時代的因縁

AI要約

7月中旬、トランプ氏はJ.D.バンス上院議員を副大統領候補に指名。バンス氏は過去にトランプ氏を批判したが、最も近しい人物として目される。彼の指名は欧州でも大きなニュースとなり、トランプ氏の息子やイーロン・マスク氏も歓迎。

バンス氏はオハイオ州出身で、ラストベルトの白人貧困層出身。この経歴や知名度を利用してトランプ氏はラストベルトでの選挙戦に優位に立とうとしている。カリフォルニア州でも期待が寄せられている。

バンス氏の若さやインド系の妻の存在がトランプ氏の弱点を補っており、白人労働者階級の票を取り込むための攻勢が予想されている。

ハンマーで叩き壊される日本車! 80年代のジャパン・バッシングと、白人貧困層出身「副大統領候補」の時代的因縁

 7月中旬、トランプ氏はJ.D.バンス上院議員を副大統領候補に指名した。このバンス氏の指名は、米国内はもちろんのこと、欧州でも大きなニュースとなった。

 バンス氏は、過去にトランプ氏を批判していたが、今ではトランプ氏に最も近い人物として目されている。一部の報道では、トランプ氏は、バンス氏の過去の発言に恨みを持っているものの、それを我慢してでも迎え入れるメリットが大きいとさえいわれているぐらいだ。

 また、トランプ氏の息子のエリック氏と仲がよく、かつ最近トランプ氏との緊密な関係で注目を浴びているイーロン・マスク氏もバンス氏の指名を歓迎しているという。では、バンス氏に、大統領選挙線を戦う上でどのようなメリットがあるのだろうか。

 バンス氏は、オハイオ州出身である。

 同州はラストベルトの中西部に位置し、バンス氏も

「白人貧困層」

出身だ。氏の生涯を振り返った著書「ヒルビリー・エレジー」は、ベストセラーとなり映画化もされている。トランプ氏は、バンス氏の白人貧困層出身という経歴や知名度の高さを利用して、ラストベルトの選挙戦を優位に戦おうとしているのではないかと見られている。

 実際、前回の大統領選では、ラストベルトのうち、トランプ氏が勝利できたのは3州にすぎず苦戦を強いられていた。また、バンス氏は、シリコンバレーの投資会社に勤めていたこともあり、民主党支持者の多いカリフォルニア州でも一矢報いるのではないかと期待されている。

 このほか、バンス氏の39歳という若さや、インド系の妻ウーシャ氏の存在もトランプ氏の弱点を十分補っているようだ。

 ラストベルトは、1980年代以降に定着した言葉で、日本語では

「さびついた工業地帯」

といわれている。以前は重工業や製造業が盛んであったが、国際競争力の低下とともに衰退しさびついた工場が立ち並び、その光景からラストベルトと呼ばれるようになった。

 地理的には、五大湖周辺から東海岸にかけての地域を指しており、

・ウィスコンシン州

・イリノイ州

・ミシガン州

・インディアナ州

・オハイオ州

・ペンシルベニア州

・ウエストバージニア州

などで構成されている。ラストベルトは、米国製造業衰退の象徴としてだけでなく、かつて製造業を支えてきた白人労働者による

「中流階級瓦解(がかい。物事や組織が崩れたり、崩壊したりすること)」

の象徴ともされてきた。

 もちろん、ラストベルトの製造業が全滅したわけではなく、今でも鉄鋼や自動車産業が残っており米国製造業の中心地にはかわりない。だからこそトランプ氏は、自国の製造業の保護といった

「かつての強い米国」

を想起させるような政策により、白人労働者階級の票の取り込み躍起になっている。今回の大統領選挙戦では、バンス氏の起用でさらに攻勢をかけられるかもしれない。