「原価1000円超」独自進化した“天然”かき氷のすごみ 天然氷は日光から仕入れ、1杯手回し132回のこだわり

AI要約

2024年夏、東京都内で人気の天然氷を使用したこだわりかき氷店が増え続けている。高価な原材料費や人件費にもかかわらず、1杯1500円以上、2000円を超えるメニューも存在し、繁盛店は常に客で賑わっている。

「ひみつ堂」は東京都台東区で8時から19時まで営業し、1日平均1000人以上の来店客を抱え、平均客単価は1800円。店主の異色の経歴やこだわりの取り組みが客の支持を集めている。

店主は元歌舞伎役者であり、20以上の職を経験した経歴を持つ。こだわりフルーツや天然氷の使用、季節ごとのメニュー展開など、独自のアプローチが人気の秘訣となっている。

「原価1000円超」独自進化した“天然”かき氷のすごみ 天然氷は日光から仕入れ、1杯手回し132回のこだわり

 酷暑の2024年夏。天然の氷を使った、こだわりかき氷店が人気だ。

 東京都内で店が増えたのは2010年代からで、一過性のブームに終わらず消費者に支持されている。近年は価格も上がった。天然氷や果物といった原材料費や人件費の高騰で、店によっては1杯1500円以上、2000円を超えるメニューもある。それでも繁盛店には客が押し寄せる。なぜ支持されるのか。人気の裏側をリポートした。

【写真】「ひみつ堂」の天然かき氷は、元歌舞伎役者の店主が13年かけて進化させてきた(5枚)

■夏は1日平均1000人、平均客単価は約1800円

 東京都台東区にある「ひみつ堂」は屈指の人気店だ。2011年5月、“谷中ぎんざ”の横にある現在地で開業、隣接する店と合わせて営業する。メディア取材も多く、体験者がSNSに投稿する店として知られている。

 8月のお盆明けに同店に足を運んだ。前日までの大混雑は一段落していたが、それでも10人程度の行列となっていた。

 「夏の間はずっとこんな感じです。並ばれる人数は増減しますが、8時から19時までの営業時間中はつねにお客さんが絶えません」

 「ひみつ堂」店主でオーナーの森西浩二氏はこう話す。実は別室で仕込みをしながら取材に応じてもらった。夜の需要に備えて商品を切らさないためだという。

 「この時季は1日平均1000人の方が来店されます。当店はこだわりフルーツを提供しており原価率も高いですが、客単価は平均1800円。2000円を超えるメニューもあり、値段が高いものから売り切れる傾向にあります」(森西店主)

 仕込み部屋にはフルーツの箱が並ぶ。この日は「つがりあんメロン」(津軽で生まれ育ったメロンの総称)や「キーツマンゴー」(沖縄宮古島産)などが次々に剥かれていた。

 「栃木県日光の天然氷と並ぶ主役たちです。夏のメロンは産地を厳選して自家追熟したものを使い、宮古島では農園の一角に自分たちが植えたマンゴーの木もあります」(森西店主)

■店主は元歌舞伎役者の異色の経歴

 同店は東京における天然氷のかき氷店の先駆けだ。13年前の開業時、同種の店は地方にはあったが、都内にはなかったという。

 森西店主の経歴も異色だ。20代の頃は三代目市川猿之助(当時)に弟子入りして約8年間歌舞伎役者として活動した。それ以外にイタリア料理店店長や西表島でスキューバダイビングインストラクター、トラックドライバーなど20以上の職種を経て起業。「料理が好きだったのと、歌舞伎で学んだお客さんに楽しんでいただく思いから」かき氷を選んだ。