コメ価格急騰下で「指数先物」の取引本格化 堂島取引所、JAの影響力低下も

AI要約

堂島取引所に上場した指数先物「堂島コメ平均」の取引が本格化し、米価の予測とリスク軽減効果が期待される。

生産者、消費者双方にとって収益の安定や価格変動リスクの軽減が見込まれるが、生産者側からは慎重な声も上がっている。

JAグループなどが将来のコメ価格の影響を懸念し、先物市場に対する慎重な対応を検討している。

コメ価格急騰下で「指数先物」の取引本格化 堂島取引所、JAの影響力低下も

堂島取引所(大阪市)に上場した、将来の米価を予測して取引を行う指数先物「堂島コメ平均」の取引が20日、本格的に始まった。JAグループが主導してきた米価形成を多様化し、生産者の経営安定に活用してもらうことを目指す。ただ信頼される指標になるには生産、消費者双方の幅広い取引への参加が必要で、課題は少なくない。米価の急騰が消費者の生活に深刻な影響を与える中、新市場がどのような効果を生み出すか注目される。

■価格変動リスク軽減

「堂島コメ平均は、コメに関わるすべての方に参照していただける指標になる」。堂島取引所の有我渉社長は大阪市で開かれた記念式典で上場の意義をこう強調した。

米価は消費量の減少などで下落を続けてきたが、近年は異常気象により急上昇する事態が発生するなど安定していない。生産者が将来のコメの値下がりを心配する場合、先物市場で事前に売っておけば損失を回避できる可能性がある。

一方の消費者側にとっても「外食産業などが先物で利益を得られれば、実際の米価が上昇しても安定した価格でメニューを提供できる」(市場関係者)ことになる。コメ指数先物は将来の米価変動リスクを軽減し、生産者、消費者の双方を守る効果が見込まれる。

堂島取引所の前身では、江戸時代に世界初の先物商品とされるコメ先物の取引が始まった。その後取引が途絶えたが、平成23年に特定産地の銘柄を対象に現物の引き渡しを含むコメ先物が試験上場された。しかし参加者や取引量が拡大せず、本上場には至らなかった経緯がある。

そのため今回は、全国の主食用米の平均価格から算出された「指数先物」を対象に取引が行われ、現物での受け渡しは行わない。「実際にコメを扱わない個人でも投資がしやすい」(市場関係者)仕組みで、幅広い投資マネーの取り込みが期待されている。

■生産者側は慎重な声も

一方、生産者側からは慎重な声も聞かれる。全国のコメ流通量の約半分を担うJAグループは、コメ先物取引について「生産者とJAの所得向上やリスク抑制につながるのかという観点で対応を検討している」(担当者)と説明する。

現在のコメ流通は、生産コストに基づいて決められた「概算金」と呼ばれる前払い金を、JAなど生産団体が生産者に支払うことで成立している。市場関係者は「JAには、先物市場の登場で米価決定での影響力が低下することへの懸念がある」と指摘する。