未来をつくるのは、やっぱり「電気自動車」 建物内を走って、目指せエコ都市生活

AI要約

交通の基本的な役割は、人と人をつなげ、物や情報、場所へのアクセスを支援する。高齢者や障がい者の増加により、ユニバーサルデザインやエコデザインが重要視されている。

電気自動車や自動運転技術は、都市のウェルビーイング向上に貢献する可能性がある。電気自動車の普及による移動手段の革新が、SDGs型の未来都市構想に不可欠。

新しい乗り合い電動車両の例であるインホイールモーター型の電動バスは、ユニバーサルデザインの実現や建物内での運行を可能にし、グリーンスローモビリティの実現に寄与している。

未来をつくるのは、やっぱり「電気自動車」 建物内を走って、目指せエコ都市生活

 交通の基本的な役割は、人と人をつなげ、物や情報、場所へのアクセスを支援することだ。これによって人々の交流が深まり、最終的には幸福度(=福祉度)の向上に寄与する。しかし、最近では高齢者や障がい者が増加しているため、交通の役割について再考する必要がある。

 現在、交通分野の主要なテーマは

・ユニバーサルデザイン(年齢や能力にかかわらず使いやすいデザイン)

・エコデザイン

の推進だ。筆者(西山敏樹、都市工学者)は長年にわたり、電気自動車(本稿では電池に電気を蓄えて走る狭義の電動車両を指す)や自動運転車両の調査を行ってきた。特に電気自動車は

・排ガス

・騒音

がないという利点があり、将来的には

「建物内を自由に走行できるようになる」

ことを夢見ている。これにより、駐車場から目的地までの移動をカットできる可能性があり、都市でのウェルビーイングの向上につながるだろう。ウェルビーイングは、単に病気がない状態ではなく、生活全般における満足感や幸福感を含む広範な概念であり、

・身体的健康

・精神的健康

・社会的関係

・生活の満足度

の要素が含まれる。SDGs型の持続可能な未来都市を考える際、電気自動車と自動運転技術は欠かせない要素なのだ。

 本稿では、筆者がこれまでの調査を通じて描いてきた未来都市のモビリティのビジョンを紹介し、皆さんと共有したい。

 最近、インホイールモーター型(車両のホイール内に直接モーターを組み込んだ設計)の電動バスが電気自動車業界で注目されている。特に、タジマモーターコーポレーション(東京都中野区)が発表した「TAJIMA NAO2」が話題になっている。

 この電動バスは、環境省が提唱するグリーンスローモビリティ規格に適合した新しい乗り合い電動車両で、4輪にインホイールモーターを搭載し、超低床フラットフロアを実現している。これにより、車いすの乗降も可能で、コミュニティー交通や地方都市の小需要の路線バスとしての活用が期待される。

 インホイールモーターは車室空間を有効に使うことができ、車両のユニバーサルデザイン化を実現する。例えば、デパート内にこうした電動バスを走らせれば、買い物後すぐにバスに乗って帰宅できるため、

「荷物を持ってバス停まで歩く必要」

がなくなり、ユニバーサルデザインの性能を、個々の車両から移動システムにまで拡大できる。

 タジマモーターコーポレーションの小型バスはグリーンスローモビリティの例であり、同様の技術を用いて中型バスや大型バスを開発し、建物内での運行も技術的には可能だ。さらに、小型電動乗り合い車両を応用して

「電動救急車」

を作り、救急措置室に入れるようにすれば、医療ケアの大きな効果が期待できる。また、電動バスが駅の改札口前に到着し、すぐに鉄道からバスに乗り換えられる光景も想像できる。こうした未来の可能性を考えると、楽しみが広がる。