「私たちの時代には年金はもらえなくなる?」「年金保険料を支払うのはもったいない」…そんな疑問を解消するため今こそ知っておくべき「年金の常識」【FPが解説】

AI要約

日本の年金制度について、積立方式と賦課方式の違い、将来の年金額への懸念、元が取れる期間、年金の保障などを解説。

現在の年金制度は賦課方式で、将来の年金額はマクロ経済スライドにより調整される可能性があるが、損はしない可能性が高い。

公的年金は一生涯受け取れる手厚い保障があり、少子高齢化が進んでも十分な保障を受けられるという点で安心できる。

「私たちの時代には年金はもらえなくなる?」「年金保険料を支払うのはもったいない」…そんな疑問を解消するため今こそ知っておくべき「年金の常識」【FPが解説】

「将来、年金額は大幅に減らされる」「日本の年金制度は破綻する可能性が大きい」などの噂を耳にし、年金がもらえるか不安だったり、年金保険料を支払ってもムダなのでは…と考えている人もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、ファイナンシャルプランナー菱田雅生氏の著書、『お金のトリセツ100』(経済法令研究会)の中から一部を抜粋・編集し、必ず知っておくべき日本の年金制度について紹介していきます。

積立方式と賦課方式の違い

みなさんは、「日本の年金制度は破綻する可能性が大きい!」「将来、年金額は大幅に減らされる!」などといった報道を見て、心配になっていませんか? 

重要なのは、正しく知って、正しく備えることです。ここでは日本の年金制度について正しくみていきましょう。

日本の年金制度は、積立方式ではなく、賦課方式になっています(図表1)。

積立方式

将来のためにお金を積み立てて、それを受け取る仕組みです。でも、これだと40年50年といった長い年月の間にモノの値段が上がって、お金の価値が下がったときに対応しにくいというデメリットがあります。

賦課方式

現役世代が支払った保険料を高齢世代に年金として支払う仕組みです。そのときどきの物価や給与の水準に応じた保険料と年金額になるので、長い年月のお金の価値の変化にも対応できるというメリットがあります。

しかし、賦課方式でも、現役世代が減り、高齢世代が増える少子高齢化の影響は避けられません。そのため、厚生労働省は5年ごとに財政検証を行って、今後約100年間の年金財政の予測をして、結果を公表しています。

2019年の財政検証の結果を見る限り、年金制度の破綻や年金額の大幅減は、今のところそれほど心配する必要はなさそうです。とはいえ、20年後も30年後も安泰かどうかはわからないので、5年ごとの財政検証の結果は注目していきましょう。

年金は約10年で元が取れる

若い世代ほど、「公的年金は損だ」「年金の保険料を支払うのはもったいない」と思っている人が多いのではないでしょうか。

実は、2024年現在の保険料と年金額で計算すると(40年間きちんと保険料を支払った場合)、国民年金のみの加入者は10年程度、厚生年金加入者は9年弱で、支払った保険料と同等の額を受け取ることができる、つまり元が取れる計算になるのです(図2)。

さらに、例えば夫が会社員や公務員で妻が専業主婦だった場合、なんと6年ほどで元を取ることができる計算になります。

年金は保障の手厚い保険

そのうえ、年金は一生涯受け取れますし、遺族や障害の保障もついています。さらに、公的年金の保険料は国や企業が半分負担してくれます。公的年金は、まさに手厚い保障のついた保険だといえるでしょう。

年金減でも損しない可能性大

とはいえ、今後さらに少子高齢化が進めば、マクロ経済スライドと呼ばれる年金額調整の仕組みによって、実質的に年金額は減ります。

仮に、年1%ずつ年金額が減っていくものとして同様の計算をしてみると、減らない場合と比べて、同等額を受け取るまでの年数が1年ほど延びる程度であることがわかりました。多くの人にとって、公的年金は決して損というわけではなさそうです。

菱田 雅生

ライフアセットコンサルティング株式会社 代表取締役

ファイナンシャルプランナー