人気のコンサル業界、フェルミ面接「国内における年間の総再配達件数を推定してください」どう答える?面接官が絶賛する解答例

AI要約

コンサル業界の入社試験で使われるフェルミ推定の問題解答例を紹介。テストの要点や解答のポイントを示し、具体的な例題を解説。

フェルミ推定とは何か、どのように考えるかを解説。論理的思考力や説明能力が問われる問題であることを説明。

具体的なフェルミ推定の問題に取り組み、解答過程を示す。再配達件数の推定方法や各変数の設定を説明。

人気のコンサル業界、フェルミ面接「国内における年間の総再配達件数を推定してください」どう答える?面接官が絶賛する解答例

 今、就活市場で人気が高いコンサル業界には「フェルミ推定」や「ケース面接」と呼ばれる独特の入社試験がある。志望者の問題解決力や地頭力を測る試験だ。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した画期的な1冊だ。本稿では「フェルミ推定の例題と解答例」について、本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

● フェルミ推定で論理的思考力と説明力が試される

 フェルミ推定とは、「一見予想もできず捉えどころのない未知の値を、いくつかの手掛かりを使って論理的に推論し、短時間で概算すること」です。

 解答するためには論理的思考力や説明能力などの総合的な「地頭力」が求められるため、コンサルティングファームの採用選考において最頻出問題となっています。

 初めて取り組む人には難しく見えるかもしれませんが、回答の手順を頭に入れ、有名コンサルティングファームの問題に挑戦することで、論理的思考力や説明能力が自然と身につき、無理なく解けるようになります。

 では、さっそく次のフェルミ推定問題に挑戦してみましょう。

● コンサルの入社試験に挑戦

 面接官:

国内における年間の総再配達件数を推定してください。

 【回答のヒント】

 ・再配達されるものには、宅配便や対面での受け取りが必要な書留郵便などがあります。

 ・世帯人数や宅配ボックスの有無で、再配達件数は変化しそうです。

 ・再配達となる場面を具体的に想像して、どのような要素を考慮すると納得感のある推定ができそうか考えてみましょう。

 回答のポイント:再配達となる場面を具体的に想像する

再配達の発生頻度に影響を与える要素を特定し、場合分けをして数値設定を行いましょう。

 以下が解答例です。

● 推定対象である「総再配達件数」の定義と範囲を明確にする

 私は、この問題を解くに際して、次のように前提を定義しました。

 ・再配達に含める配達物は、「宅配便」と「書留郵便」とする

 

・宅配便では受け取り手による時間指定が可能である

 

・書留郵便は、一般に受け取り手が時間指定をすることは少ないため、ランダムに配達されると考える

 今回は以上の前提に従って検討を進めます。

● 総再配達件数の推定方法を検討する

 まず、前提で設定した通り、総再配達件数を

 (A)宅配便の再配達件数+(B)書留郵便の再配達件数

 と考え、(A)と(B)がそれぞれどのような要素に分解できるか考えてみます。

 宅配便の再配達が発生するのは宅配ボックスの有無が大きく影響するため

 (A)=世帯数×宅配ボックスがない割合×年間の宅配数×不在率×平均再配達回数

 と求められます。

 一方、書留郵便は手渡しとなるため、書留郵便が来たタイミングで自宅を不在にしている場合に再配達となります。したがって、

 (B)=世帯数×年間の書留郵便数×不在率×平均再配達回数

 と求められます。

 以上をまとめると、求める総再配達件数は以下の式で求められます。

 年間の総再配達数

=(A)宅配便の再配達件数+(B)書留郵便の再配達件数

 (A)=世帯数×宅配ボックスがない割合×年間の宅配数×不在率×平均再配達回数

 (B)=世帯数×年間の書留郵便数×不在率×平均再配達回数

● 単身世帯と一般世帯に場合分けをし、数値を設定する

 まず、(A)(B)共通の変数として設定した平均再配達回数(再配達となった後、受け取りまでにかかる配達回数)は、全体の90%が再配達1回目で受け取り、10%が2回目で受け取ると仮定し、1.1回(0.9×1回+0.1×2回)とします。

 また、世帯数全体は

 人口1億2000万人÷1世帯あたり2.5人

 =4800万世帯(約5000万世帯)

 で、単身世帯:一般世帯=3:7と想定し、世帯数は単身世帯が1500万世帯、一般世帯(複数人で暮らす世帯)が3500万世帯とします。

 次に、(A)(B)個別の変数について考えます。

 まず、(A)宅配便の再配達件数については次のように設定しました。

 宅配ボックスがない割合は、マンション利用の多い単身世帯の方が小さく、一軒家が増える一般世帯が大きいと考えました。

 今回は単身世帯で60%と設定し、一般世帯はそれより大きい80%という値を設定しました。

 宅配数は平均して1人あたりで月に1.5回程度であると考え、単身世帯を20回(1.5回×12ヵ月=18回[約20回])と設定しました。

 また、一般世帯では同時に注文することを考慮し、わずかに増やした25回に設定しました。

 不在率は、時間指定できることを踏まえ、後ほど説明する(B)書留郵便の場合の半分に設定しました。

 また、(B)については次のように設定しました。

 本人確認が必要な書留郵便はあまり頻繁に郵送される印象がないため、単身世帯では半年に1回よりはやや多い程度で3回。一般世帯ではその倍程度で6回としました。

 また、時間指定ができないため不在率は高くなると考えられます。

 単身の学生や社会人は日中は不在であることが多く、一度で受け取れないことが比較的多いと考えて不在率は60%。一般世帯では住んでいる人が多いため不在率が半減すると考え、30%と置きました。

● 年間の総再配達件数を推定する

 総再配達件数を算出する式に各数値を代入し、実際に総再配達件数を計算します。

 年間の総再配達数

=(A)宅配便の再配達件数+(B)書留郵便の再配達件数

 (A)宅配便の再配達件数

=世帯数×宅配ボックスがない割合×年間の宅配数×不在率×平均再配達回数

=(1500万×0.6×20×0.3+3500万×0.8×25×0.15)×1.1

≒1.75億件

 (B)書留郵便の再配達件数

 =世帯数×年間の書留郵便数×不在率×平均再配達回数

=(1500万×3×0.6+3500万×6×0.3)×1.1

=9900万件

≒1億件

 ※(A)(B)ともに、単身世帯と一般世帯に分けて計算

 となるため、総再配達件数は約2.75億件と推定できます。以上となります。ありがとうございました。

● 面接官からの質問

 ──2.75億件という再配達件数は現実的だと感じますか?

 簡単に計算すると1日あたり75万件強であり、20~60代の人口が約5000万人であるとすると、約1.5%の人が再配達となっていることになります。

 1人あたりで考えると50日に1回程度再配達を発生させる(365日×1.5%=年間5.5回、365日÷5.5回≒66日/回)ということですので、特に違和感のある数値ではないように思います。

 ──より精緻な値を推定する場合、どのあたりを工夫しますか?

 最近では置き配指定や駅周辺の宅配ボックス、コンビニでの受け取りなど、再配達を減少させるための取組みも行われていますし、書留郵便に関しては送り手が到着予定日時を通知する場合もあると思います。

 したがって、これらの要素を考慮するとより精緻な値になりそうです。

 ──再配達件数を減らすにはどのような施策が考えられますか?

 実際に施策は進められていますが、不在率を減らすことと、不在であっても配達を完了できる仕組みを整えることが重要です。

 前者に関しては配達前の通知が効果的と考えます。誰しも出来ることなら一度で宅配便や書留郵便を受け取りたいので、いつ届くかが事前通知されれば人々は在宅していようとすると思います。

 また、後者に関しては、宅配ボックスの積極的な導入や、置き配指定の利用促進、宅配時のみマンションのオートロックドアを通過できるシステムの開発やルールの整備などが効果的だと考えます。

 (本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)