株を買う前に必ずチェックしたい「近いうちに業績悪化に陥る会社の隠れた共通点」【株の専門家が解説】
株トレ ファンダメンタルズ編は、株のファンダメンタルズ分析を中心にした投資シミュレーションの続編だ。
著者はファンドマネジャーで、株で勝つ技術を1冊に凝縮している。
記事では、E社とF社の棚卸資産比較を通じて過剰在庫のリスクが明らかにされている。
「この株は売り? それとも買い?」投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』の続編『株トレ ファンダメンタルズ編』が発売した。前作はチャート分析がテーマだったが、今作は企業の業績や財務の読み方を中心とするファンダメンタルズ分析を扱う。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏。何万回にも及ぶ膨大な数のトレードを経て確立した「株で勝つ技術」を1冊に凝縮した本書から、特別に一部を抜粋して紹介する。
● 『株トレ』のクイズに挑戦!
業績悪化で株価急落のE社とF社。将来の業績回復を見込んで買い出動したい。
本決算の発表後に、バランスシートを確認したところ、どちらも自己資本比率は40%で同じですが、流動資産の内訳が違います。
E社とF社、買うべきでないのはどっち?
【ヒント】棚卸資産とは?
「在庫」とは一般的な言い方で、会計用語では「棚卸資産」と呼びます。
正解:買うべきでないのはE社。
● E社は、在庫が過大
業種や事業内容によって適正な在庫水準は異なりますが、E社の在庫は明らかに過剰です。
月商(1ヵ月の売上)の何倍の在庫を持っているか計算してみましょう。
平均月商
=売上高60÷2ヵ月
=5
在庫(棚卸資産)÷平均月商
=50÷5
=10(在庫は月商の10ヵ月分)
年商(1年間の売上高)が変わらないとすると、今ある在庫を売り切るのに10ヵ月もかかります。
明らかに多すぎです。在庫が多すぎる会社は、次のような問題に苦しんでいる可能性も……
● (1)大量に売れ残り「意図せざる在庫」が増加
在庫が適正水準に減少するまで、製造業ならば減産が必要です。工場停止などによって業績がさらに悪化します。
流通業ならば、次の流行をとらえるための仕入れができなくなり、売上不振の悪循環が続きます。
● (2)不良在庫の発生
コスト割れまで値下げしないと売れないかもしれません。
流行が去って売ることができなければ、廃棄処分が必要です。不良在庫の処分で損失が発生する恐れがあります。
● (3)在庫保管コストや借入金の金利負担が業績に悪影響
在庫調整(在庫を適正水準まで減らすこと)が済むまで、業績悪化が続きそうです。
● 一方F社の在庫は……
F社が月商(1ヵ月の売上)の何倍の在庫を持っているか計算してみましょう。
平均月商
=売上高120÷12ヵ月
=10
在庫(棚卸資産)÷平均月商
=15÷10
=1.5(在庫は月商の1.5ヵ月分)
F社は、今ある在庫を1ヵ月半くらいで売り切ることができそうです。おおむね在庫は適正と推定されます。
(本稿は、『株トレ ファンダメンタルズ編』から抜粋・編集したものです。)