10年先を見据えたハイブリッドシステム! スズキ発表「48Vスーパーエネチャージ」は何がすごいのか?

AI要約

スズキが新しいハイブリッドシステム「48Vスーパーエネチャージ」を発表。従来のS-エネチャージよりも進化したシステムで、電圧を48Vに上げることで性能向上を実現。

48Vスーパーエネチャージはエンジンと変速機の間にコンパクトなモーターを搭載し、通常のエンジンと同じ大きさになる。この特長を生かして多くの車種に展開可能。

システムはFF、FR、AWD車に対応し、AT、CVT、MTにも適用可能。設計変更を最小限に抑え、スケールメリットを生み出す。

10年先を見据えたハイブリッドシステム! スズキ発表「48Vスーパーエネチャージ」は何がすごいのか?

 7月17日、スズキは「10年先を見据えた技術戦略説明会」を開催し、五つの技術戦略を発表した。そのなかで、「48Vスーパーエネチャージ」と呼ぶ新しいハイブリッドシステムの発表があった。

「エネチャージ」とは、現在のスズキ車に採用されているハイブリッドシステムの名称で、同社の軽自動車やコンパクトカーのほとんどに採用されている技術。主にエンジンを補助するマイルドハイブリッドである。

 初期のエネチャージはオルタネーターによる回生発電のみだったが、後の「S-エネチャージ」はオルタネーターを強化したモーター機能付き発電機(ISG)を搭載し、ある程度のモーター走行を可能にした。

 ハイブリッド化による燃費向上効果は、トヨタ・プリウスのようなストロングハイブリッドには及ばないが、既存技術を応用したISGベースのシステムはコストパフォーマンスが高く、軽自動車のような安価な車種にも大幅なコストアップをともわずに搭載できるのが最大のメリットだ。

 今回発表された48Vスーパーエネチャージは、S-エネチャージの発展型であり、コンセプトもコストパフォーマンスを重視したマイルドハイブリッドである。

 大きな変更点はふたつある。まず、システム電圧を12Vから48Vになったことで、モーターの出力がアップし、走行領域が拡大、燃費が向上した。

 また、従来のS-エネチャージではISGとエンジンの接続に補機系ベルトを使用していたが、48Vスーパーエネチャージではモーターとエンジンの接続にギア駆動を使用することで、無駄なロスを減らし効率を向上させている。

 また、ハイブリッド用バッテリーを過剰に使用しない方針である「バッテリーリーン」という方針も盛り込まれている。

 スズキが得意とする小型車はコストアップのハードルが高く、できるだけ小さなシステムで電動車を開発するのが狙いだ。

 48Vスーパーエネチャージは、確かにハイブリッドシステムの性能を向上させるが、それ以上にスズキが強調しているのは、汎用(はんよう)性の高さだ。

 S-エネチャージのISGはエンジンのフロント側に搭載されていたが、48Vスーパーエネチャージはエンジンリア側のエンジン~変速機の間にISGの性能を高めたモーターを搭載している。このシステムを搭載するスペースはエンジンと変速機の間でコンパクトかつ薄く、48Vスーパーエネチャージを搭載したエンジンは通常のエンジンとほぼ同じ大きさになる。

 スズキの狙いは、この特長を生かして多くの車種に並行展開することであり、薄さを優先したハイブリッドシステムはスズキならではのものである。

 スズキは48Vスーパーエネチャージの採用例として前輪駆動(FF)車用の3気筒エンジンを発表しているが、同システムは後輪駆動(FR)車や全輪駆動(AWD)エンジンにも適用できる。

 自動変速機(AT)だけでなく、無段変速機(CVT)や手動変速機(MT)にも対応しており、エンジンと変速機の間に薄いギア駆動システムを取り付けるだけで、48Vマイルドハイブリッド車にすることができる。

 このシステムは、従来のエンジンや変速機の設計変更を最小限にとどめることができ、ひとつのシステムを汎用的に搭載することによるスケールメリットはかなり高いだろう。