ICカード残高不足で児童がバス降車! ネット大荒れ「遠鉄問題」の本質はどこにあるのか? まずは知るべきは「ドライバーの苦悩」「決済システムの課題」である

AI要約

遠州鉄道(静岡県浜松市)は路線バスドライバーの不適切な接客について謝罪文を掲載。

児童がICカードの残高不足で難儀し、40代男性運転手の威圧的な態度を受ける。

反応や国土交通省の指針についても触れられている。

路線バスの初任運転者の教育事項など、安全性に関する指導の必要性。

現状での接遇教育の不足も指摘。

ルール違反や接客態度の問題など、路線バス事業の課題に対する懸念。

ICカード残高不足で児童がバス降車! ネット大荒れ「遠鉄問題」の本質はどこにあるのか? まずは知るべきは「ドライバーの苦悩」「決済システムの課題」である

 遠州鉄道(静岡県浜松市)は8月2日、路線バスドライバーによる不適切な接客を受け、公式サイトに謝罪文を掲載した。

 同社によると、7月22日、浜松市内を走行中の路線バスで、小学生低学年の男子児童が下車しようとしたところ、ICカードの残高が足りなかった。そして、運転手の40代男性にあごを触られ

「こっちを向いて」

「こういう時はどうするの」

と強い口調でいわれ、威圧的な態度で謝罪と親への報告を求められたという。児童は別のバスに乗り換えて帰宅するはずだったが、最高気温37.7度の猛暑のなかを約2時間歩いて帰宅した。これがことのいきさつである。

 遠州鉄道は児童の家族に謝罪し、当分の間、ドライバーを乗務から外した。この問題は各メディアで報道された。

 路線バスの専門家である筆者(西山敏樹、都市工学者)はSNSで、次のような反応を目にした。

「ICカードの残額を気にかけなかった親が悪い」

「親も人間だからミスをするし、仕事で忙しい場合もある」

「接客業として落ち着いて行動出来ない人には、そもそも路線バスのハンドルを握らせてはダメ」

「小学校の低学年であるのは見ればわかることで、それでも高圧的な態度に出るのはサービス業として大問題である」

目立っていたのは、親のミスを突いたようなコメントや、そもそもこのドライバーが接客業に向いていないというコメントだった。

 2018年6月1日に改訂された国土交通省告示第1676号「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」では、路線バスの初任運転者の教育事項について、次の項目を定めている。

1.バスの安全な運転

2.バスの構造上の特性と日常点検

3.運行の安全及び旅客の安全確保

4.危険の予測及び回避

5.安全性の向上を図るための装置を備えるバスの適切な運転方法

6.ドライブレコーダーの記録を利用した運転特性の把握と是正

7.安全運転の実技

 実技では、約1週間の座学を通じて、

・運輸規則

・道路交通法等の関連法規

・点検・点呼の方法

・アルコールの基礎知識

・日常業務

・運賃の取り扱い

を学ぶ。さらに1か月以上かけて、

・運転姿勢

・車両特性や視界特性の把握

・後退

・消火器

・発煙筒の使用方法

などを学び、一般道路走行、夜間走行に移る。路線バスの運転が安全第一であることに異論はないだろう。しかし、接遇教育の多くは指導ドライバーから学ぶため、一般的なコミュニケーショントレーニングが不足しているのが現状だ。