「なぜあの男は私とつき合わないのか」…40代職場ストーカーの「知られざる実態」

AI要約

ストーカーの心理や行動について解説された記事。現実認識のズレや幻想的願望充足、高すぎる自己評価などがストーカーの特徴として挙げられている。

ストーカーは一方的に恋愛感情を抱いて相手を追いかけるが、相手の拒否を拒絶し、自分都合のいいように現実を歪曲する傾向がある。

自己評価が過大である場合もあり、自分は美人で優秀だと思い込んでいるため、相手からの拒絶に怒りを感じることがある。

「なぜあの男は私とつき合わないのか」…40代職場ストーカーの「知られざる実態」

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自分が好意を抱いている男性の自宅まで押しかけるストーカーまがいの行為を繰り返し、相手も自分に好意を抱いていると思い込んでいるので、この40代の女性の現実認識はかなりズレているといえる。

こうした現実認識のズレはストーカーの多くに認められ、しばしば次の三つの形で表れる。

(1)都合のいいように現実を歪曲

(2)「幻想的願望充足」

(3)高すぎる自己評価

まず、この女性もそうだが、ストーカーは自分に都合のいいように現実を歪曲する。手作りのお菓子を渡されて、むげに断るわけにもいかないので、20代の男性は受け取り、おいしそうに食べただけなのだろうが、それを40代の女性は「自分に好意を抱いているから」とねじ曲げて解釈している。

こうした曲解は、一方的に恋愛感情を抱いてつきまとうストーカーのほとんどに認められる。いくら相手から嫌がられても拒否されても、男性のストーカーなら「あの女性は恥ずかしがっているだけで、本当は僕のことが好きなのだ」、女性のストーカーなら「あの男性が私とつき合わないのは、私が高嶺の花で手が届かない存在だと思っているから」などと曲解する。そして「向こうが照れているのだから、こちらから近づいていかなければ」と考え、ストーカー行為を繰り返す。

このような曲解は、「~だったらいいのに」という願望と現実を混同する「幻想的願望充足」によるところが大きい。「相手も自分を愛してくれたらいいのに」という願望が強すぎるあまり、「相手も自分を愛している」という幻想を抱き、それがあたかも現実であるかのように思い込む。

場合によっては、ここで取り上げた40代の女性のように、「20代の男性と結婚できたらいいのに」という願望と現実に「結婚できる」ということを混同し、相手を「許嫁」「運命の人」などと認識する。もっとも、実際には自分の願望通りになるわけではないので、目の前の現実を受け入れられない。いや、むしろ受け入れたくないので、怒りや恨みを募らせて攻撃的になるのだ。

さらに、自己評価が高すぎるストーカーもいる。客観的評価とは関係なく、「僕は優秀」「私は美人」などと思い込んでいるので、相手から拒絶されると余計に腹が立つ。「こんな優秀な僕の誘いを断るなんて」「こんな美人の私を振るなんて」と怒りを爆発させ、暴走する。

実は、この40代の女性も、自分は美人で20代に見えると勘違いしているふしがあるように見受けられる。若い頃はそれなりに美人だったのかもしれないが、実際には年齢相応にシミやしわがあり、しかも太っているので、婚活でも苦戦しているようだ。にもかかわらず、本人の自己認識は違う印象を受ける。だから、怒りは「己に対する過大評価」(『怒りについて 他二篇』)から生じるという古代ローマの哲学者、セネカの言葉は、まさに彼女を含めたストーカーの心理を的確に言い表していると痛感する。

つづく「相手から愛されていると思い込む『40代女性の精神構造』…解雇したくてもできない『苦しいワケ』」では、この40代女性が相手から愛されているという妄想を抱いている可能性や、その後の顛末などについて深堀りする。