失業者増か、業務強化か? アクセンチュア予測「生成AIと日本経済」3つのシナリオ

AI要約

アクセンチュアが「生成AIのお試し期間は終わった」と結論を下しており、生成AIが企業全体にもたらす可能性について解説する。

アクセンチュアの調査によると、生成AIは従業員の参加を通じて10兆3,000億ドルの経済価値を生み出す可能性があるが、経営幹部や従業員はまだ活用に不安を感じている。

組織は今後、社員の生産性や顧客体験の向上といった分野から生成AIを本格導入し、戦略的な業務変革を進める必要があり、日本企業はAI人材を育成し、AI活用組織を整備する必要がある。

失業者増か、業務強化か? アクセンチュア予測「生成AIと日本経済」3つのシナリオ

 前回は、ジェネレーティブAI(生成AI)が職業や生活にどれほどの影響をおよぼすかを「ホワイトカラーの業務」「未来の購買体験イメージ」などを交えながら説明した。実はアクセンチュアでは「生成AIのお試し期間は終わった」という結論を下している。本稿ではその理由と「生成AIと日本経済」に関する3つの予測シナリオを解説する。「失業者増」「業務強化」という予測の違いはなぜ生まれるのか? 「より良い未来を手に入れるためのAIの使い方」をアクセンチュアが提言する。

 アクセンチュアの調査「生成AIがもたらす企業全体の再創造(Reinvented in the age of generative AI)」によると、生成AIは農業革命や産業革命以来、最大の変化を仕事にもたらす。具体的には業務や役割の再構築に従業員を積極的に参加させることにより今後、10兆3,000億ドルという莫大な経済価値を生み出す可能性があると示している。

 また同調査では、世界の経営幹部の86%が「生成AIは自社や業界にとって変革要素になる」と考え100%が「自社の労働力に変化をもたらす」と予測する一方で、67%は生成AIを活用した企業全体の再創造を導くのに十分な状態ではないと告白している。

 経営幹部は生成AIの可能性に大きく期待しつつも、まだその準備は整っていないのが現状だ。また従業員も、95%は生成AIの活用に価値を見出しているが60%は必ずしも組織が従業員にとって良い選択を保証するとは信じていないなど、活用に不安を感じている。

 ChatGPTブームが落ち着いてきた今、生成AIのお試し期間を終え、本格活用に舵を切るべきタイミングに来ている。

 まずは、効果が出やすい「社員の生産性向上」や「顧客体験の向上」といった領域から本格導入を進めるべきだ。ひいては現在の事業を生成AI主導に見直し、成長をもたらす大きな変革に戦略的に投資し、抜本的な業務変革を実現することこそが重要だ。

 現状、企業の大半は生成AIを個別業務機能改革といった短期的に効果を出しやすい(No Regret)領域を中心に適用している。だが持続的成長を遂げている企業はそれらに加えて、生成AIを用いて仕事のし方を根本から変えるような変革(Strategic Bet)も始めており、生成AIによる飛躍的な成長やゲームチェンジを狙っている。

 この大きな変革を進める上で日本の企業に求められるのは、生成AIのリスク軽減策も組み込んだ生成AI活用基盤を整備とともに、AI人材とAIを活用できる組織をつくることだろう。