キリンによる買収劇、狙いは「ファンケルの特許」。識者が語る2200億円TOBの真実

AI要約

キリンはファンケルを完全子会社化するためのTOBを実施

TOBに際してプレミアムを上乗せして買収額は約2100億円見込み

キリンは成長性をアピールし、キリングループの成長を目指す

キリンによる買収劇、狙いは「ファンケルの特許」。識者が語る2200億円TOBの真実

キリンホールディングス(以下、キリン)は6月中旬、ファンケルを完全子会社にすることを目的として株式の公開買付け(TOB)を行うと発表した。

もともとキリンは2019年にファンケルの株式の約33%(議決権ベース)を取得、持分法適用としていたが、今回のTOBにより完全子会社化を目指す。ただ、売り上げや利益を見ると実はファンケルも好調とは言い難い。それでもTOBを実施するのは、売り上げとは別の「ある点」に強みを見出しているからだ。

キリンが仕掛けた TOBにおける株式の買付価格で支払われるプレミアム(6月13日終値に対する上乗せ幅)は42.74%。

2019年以降の類似ケースでのプレミアム水準とほぼ同等とはいえ、かなりの上乗せをしてTOBに踏み切る。買収額は約2100億円と見込まれ、TOBが成立した場合、ファンケルは非上場化される見通し。今回の完全子会社化により、キリンは、「国内外の事業基盤や購買データの相互活用の強化、共同研究の深化、環境技術の水平展開など、現在の資本業務提携の枠組みを大きく上回るさまざまなシナジー効果が期待できる」、と狙いを説明する。

ファンケルをキリングループのヘルスサイエンス事業の中核事業会社として位置付け、ヘルスサイエンス事業をアジア・パシフィック最大級へと成長させることで、キリングループ全体の成長を実現させると意気込む。

まず、キリンが置かれている状況を見ていく。

キリンの泣き所は「成長性」だ。トップライン(売上収益)の過去5年間の平均成長率(CAGR)はわずか2%。

株価も、成長性が反映される株価収益率(PER、会社予想ベース)で見ると、7月13日終値で13.3倍と、東証プライム中間値である14.7倍を下回っており、何としても市場に成長性をアピールしたいという本音がある。

だが、実はファンケルも成長性という意味では課題が多い。

途中に新型コロナ感染拡大があったとはいえ、ファンケルの過去5年間の売上高平均成長率(CAGR)は-2%とマイナスであり、2024年度予想でも2018年度や2019年度の売上高実績を下回る。また、営業利益の過去5年間の平均成長率(CAGR)は0%と横ばいにとどまっている。

最近の利益回復のドライバーも、どちらかというと化粧品関連がけん引しており、キリンが期待する栄養補助食品やその他は規模も小さく、それほど伸びているわけではない。