小田急、観光客殺到の箱根に“危機感”。「プラス1000円」プラン発売に踏み切った理由

AI要約

箱根観光は急上昇しており、2023年の観光客数は過去最高になった。

小田急電鉄が新たな旅行商品「エシカル旅プラン」を発売し、環境保護や地域支援に貢献できる内容になっている。

プランではカーボンクレジットを用いてCO2の削減や自然景観の保全に取り組んでおり、環境に配慮した旅行が可能となっている。

小田急、観光客殺到の箱根に“危機感”。「プラス1000円」プラン発売に踏み切った理由

箱根観光の人気が急上昇している。

2023年の年間観光客数はコロナ禍直の2019年から55万人増え、1951万人となった。外国人の人気観光地ランキングでも東京、京都、大阪に続く4位。2023年のインバウンド宿泊客は前年比827.2%と激増している。

そうしたなか、小田原─強羅を結ぶ人気路線「箱根登山電車」を持つ小田急電鉄が打ち出した、新機軸の旅行商品が話題を呼んでいる。6月に発売した「エシカル旅プラン」だ。

実はこのプラン、往復のロマンスカーとホテル1泊分などがセットになっているが、従来からある全く同じプランよりもプラス1000円高い。

小田急電鉄ははなぜ、通常よりも1000円も高いプランを発売したのか?

「エシカル旅プラン」は、NFTアートとカーボンクレジット(※)を組み合わせ自然資源の再生を促すサービスを展開するスタートアップ・paramita(パラミタ)と小田急電鉄が共同で開発した。

1000円のうち、約半分はCO2を実質ゼロにするためのカーボンクレジット購入費に、残る約半分は箱根町に寄付して自然景観や貴重な歴史・文化遺産の保全、オーバーツーリズムへの対策などに充てられる。

プラン購入者は、地球環境や箱根の自然へのポジティブなアクションを行った証として、箱根の伝統工芸・寄木細工から着想を得たデジタルアート作品のNFT「エシカルパスポート(エシカル消費証明)」を獲得できる。

※カーボンクレジット:植林・森林整備や再生可能エネルギーへの切り替えなどによって、CO2などの温室効果ガスを吸収したり削減したりした分を、クレジットとして売買できるようにしたもの。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)のための経済的手段の1つ。

プランの内容は、8つの鉄道・バスが乗り降り自由の箱根フリーパス、往復のロマンスカーとホテル1泊分がセットになっている。それ自体は小田急の定番商品「箱根ベストパック」と変わらない。

だがエシカル旅プランでは、箱根湯本駅から強羅・大涌谷を経由して芦ノ湖を目指す「箱根ゴールデンコース」を一周する際に使う箱根登山バスと箱根海賊船が排出するCO2、さらにホテルに宿泊することで排出されるCO2を、パラミタが三重県尾鷲市の森林整備によって創出するカーボンクレジットでオフセット(相殺)する。

ちなみに、小田急電鉄はすでに、ロマンスカーをはじめとする小田急線と、ゴールデンコースの箱根登山電車、箱根登山ケーブルカー、箱根ロープウェイの運行に必要なすべての電力を再生可能エネルギー実質100%の電力に切り替えている。

そのため、このプランでは小田急線の駅から出発して帰って来るまでのCO2排出量が実質ゼロになる。