「ヒップホップ・ジャパンの時代」──Vol.5 THE HOPE

AI要約

THE HOPEは、国内最大級のヒップホップフェスであり、日本のヒップホップシーンの盛り上がりを象徴する存在として位置づけられている。

過去の開催経緯やコンセプト、会場の移動などを通じて、ヒップホップカルチャーの拡大と若者へのエデュケーションを重要視している一方、アーティストのクリエイティブな側面を引き出す取り組みも行っている。

今年の第3回目では、2日間の開催やより多彩なアーティストラインナップを通じて、ヒップホップを愛好する若者たちがさらにカルチャーに親しむきっかけを提供することを目指している。

「ヒップホップ・ジャパンの時代」──Vol.5 THE HOPE

日本のヒップホップ・シーンの盛り上がりを伝える短期連載。 第5回は、国内最大級のヒップホップフェス「THE HOPE」の実行委員会に開催のきっかけから今年の意気込みを訊いた。

──THE HOPEは2022年10月、代々木第一体育館を会場として開催されました。第1回目の開催に至ったきっかけから伺えますか?

僕たちもずっとヒップホップ・アーティストたちに携わる仕事をしてきて、国内のヒップホップの盛り上がりをずっと感じていたんです。そこで、「自分たちのカルチャーをもっと大きくしたいな」という意識が高まっていった。コロナが直撃する前の2019年、EDC JAPANというフェスにヒップホップのアーティストをブッキングする担当になったんです。アメリカのFutureや韓国のJay Parkが出てくれて、その中でAK-69や当時人気が出始めたばかりだったAwichやkZmにも出てもらったんです。フェス当日、メインのEDMのステージに負けないくらいヒップホップのステージが盛り上がったのを目の当たりにして。これをもっと大きくしていって彼らが主体になるフェスを開催したら、ヒップホップももっとリスナーが増えてますます大きくなるはずだ、と思ったんです。

でも、数カ月後、その矢先にコロナ禍があって、みんなが思うように活動できなくなってしまった。そんな中でもクラブは営業していて、世の中が制限されている時もイベントなどが開催され、もちろん「モラル的にどうなんだ」という問題を併せ持ちながらも、多くのアーティストが動きを制限される中で、一部のインディペンデントなヒップホップのアーティストたちはそこで活動を続けていた。サブスクリプションのストリーミングサービス上でもヒップホップの数字は伸びていたし、さらにそこから新しいシナジーも生まれていました。日本の音楽産業の中で、チャートアクションやライブの規模感などの裏付けを加味して、ヒップホップというジャンル全体が活性化していっている様子を肌で感じていたんです。そこで「ヒップホップの次のステージを作ろう」とアーティストらとも共鳴し、フェスの実行に移した、という経緯があります。

──大規模なフェスの開催にあたっては、時期や会場の選定も重要になってくると思うのですが、1回目に関してはどのように決めていったのでしょうか。

第1回目を開催するにあたって、いくつか会場候補があったんです。関東近郊だけでも、幕張メッセや横浜アリーナ、武道館など会場はたくさんありますが、日本のヒップホップカルチャーが発展していったエリアは「渋谷だ」と思って。カルチャーの起点だったエリアで大きなイベントを開催することに大きな意味があると思っています。2回目からは場所を台場に移していますが、初回で1万人を埋めて、次の大きなステップを考えたとき、都内で唯一3万人以上の規模でフェスが開催出来る場所は台場しかないと思いました。最初からいきなり台場でやるのは、カルチャー感やストーリー性が無くて、ちょっと難しいのかなと感じていましたが、さらに大きなトライをした2回目は、台場にして良かったと感じています。

──昨年の第2回目は、お台場の特設会場に約3万人のオーディエンスが集いました。あの光景はどのように見ていますか?

純粋に感動しましたよね。過去を辿れば、日本にヒップホップが定着した90年代の一番大きなヒップホップのイベントって、1996年に日比谷公園大音楽堂で行われた「さんぴんキャンプ」ですよね。3000人くらいの規模だったわけですけど、当時もものすごく大きいイベントだなと感じましたし、まさに当時のオールスター面子を集めて、今よりもカウンターカルチャーであったヒップホップのイベントで数千人を動員した、いわば偉業でした。そこから、30年足らずでこのカルチャーは、(観客動員数の)ゼロがひとつ増えるくらい大きなイベントを開催できるまでになったんだ、と思うとただただ感動しました。初年度の集客数はコロナ禍の制限もあって10000人ほどだったんですが、わずか1年で観客の数が3倍になるということも考えていなかったですし。3000人が1万人になり、それが3万人になったのもすごいことだと思っています。

──昨年の2022年からは会場をお台場の特設会場に移しています。お台場ならではのポイントや改めて感じた点などはありますか?

良かった点は、やっぱり屋外のロケーションですね。関東圏で、屋外のヒップホップフェスをやっているのは「THE HOPE」だけだと思うんです。実際に来ていただいたら、初めてフェスにきた人でも楽しめるような開放感を味わえると思います。屋外ならではの非現実的なムードもありますし。ただ、やっぱり雨天リスクは避けられなくて、去年はリハーサルのタイミングで雨が降っていて、それでタイムテーブルが押してしまったんですけど。反対に、台場なので、渋谷に求めていたようなカルチャー感がないんですよね。将来的に、もっと港区や地元の商業施設、自治体と連携してストリートっぽさを演出するというか、一過性のイベントだけではなく、「THE HOPE」を軸にしつつその前後でカルチャー色を出していけたらとも思います。ヒップホップと地域の活性化や地方創生というテーマ、そして、自治体と連携して活性化を働きかけることってなかなかないと思うので、そうした社会性の部分にも挑戦していきたいなと思っています。

──「THE HOPE」にはどんな客層が集っているのでしょうか。

「THE HOPE」の来場者は、10代から24歳以下の客層が約75%を占めています。その世代がこんなにシェアを占めている音楽フェスって、他にあまりないんじゃないかと思います。「THE HOPE」に来ている若者たちがヒップホップカルチャーをトレンドとして捉えてくれているということは、彼らがヒップホップをもっと好きになって、一過性のトレンドや現象ではなく、カルチャーとしての良さを体感して伝え続けていけば、今後ももっと日本のヒップホップは大きくなっていくんじゃないかと思いますし、そのころには今のUSさながら日本のチャートはヒップホップが独占し、できれば、日本の「Rolling Loud」やヒップホップの「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」みたいな、数十年も後世に続くジャンルの風物詩のようなイベントにしていきたいですよね。

──ちなみに、安全面への配慮も気になるところなのですが、そうした点における取り組みはいかがでしょうか。

セキュリティ人員を配置することはもちろんですし、フェス全体のメッセージとして「喧嘩は良くない」、「喧嘩はダサい」と伝えていきたいと思っています。個人的には、アーティストなんだから、“暴力を捨ててマイクを持つ”というスタイルでいるべきだと思っていますし、そういう雰囲気作りをしていきたいなと。DJやダンサー、グラフィティライターといったラッパー以外のアーティストも同様ですけど、暴力は捨てて、もっとクリエイティヴでかっこいい世界を作っていきましょうよ、と呼びかけたいです。

これはアーティストともよく話すんですけど、ヒップホップの文化の拡大と若い子達へのエデュケーションを両軸でやっていかねばならないよね、と。リスナーにも、どういうものがカッコよくて、どういうものがカッコ悪いか、ということを伝えていかないといけないな、と感じています。それに、ラッパーたちにはリスナーたちの目標になるような存在でいてほしいので。

──第3回目を迎える、今年のTHE HOPEにおける意気込みはいかがでしょうか。

まず、今年は単日の開催から2デイズの開催になるという大きな変化があります。その分、アーティストのラインナップ数も増やす予定です。「アーティストのライブ時間を長くしてほしい」という声も頂いているので、そういった部分にも対応していこうと思っています。

──例年、DJも含めて50組を超えるアーティストがラインナップされていいますが、ブッキングはどのように進めているのでしょうか。

コアなキャスティングチームがいて、例えば今年だと、DAY1とDAY2のそれぞれの方針を決めて、誰がマッチしていくのかということを、過去の集客データなども鑑みて決めています。あとは、誰と誰が一緒に曲をやっているのか、などの実績も加味しながら組み立てていく感じですかね。その後、委員会内で協議をして正式に各アーティストにオファーをしていく、という流れです。

──改めて、第3回目の「THE HOPE」の根幹となるコンセプトのようなものはありますか。

可能な限り、今のヒップホップを具現化したフェスにしたいです。初めてきた人でも、ヒップホップをより好きになって帰ってもらえるような設計にしたいなと。あとは、アーティストが列挙するただのフェスではなく、このアーティストの次はこの人で、誰のステージにどんな人がやってくるか、という細かいところまで楽しんでもらえたらと。1日の開催時間が8時間くらいあるフェスですけど、「あっという間だったね」と言って終わるようなフェスを目指しています。

あとは、「THE HOPE」に来て、ラッパーのステージを観て自分もラッパーになりました、っていう子たちが現れてほしいですよね。そして実際に将来の「THE HOPE」のステージに立ってほしいなと思っています。

THE HOPE

東京お台場にて9月21日(土)、9月22日(日)の2日間で開催される。チケットは今年もプラチナムとゴールドの2券種で、2daysチケットも販売中。先日の第1弾アーティスト&DJ発表に続き、第2弾出演アーティスト&DJと出演スケジュールが解禁となった。総勢56組のLIVEアーティストと、29組のDJがラインナップ。DAY1:30組アーティスト・15組DJ / DAY2:26組アーティスト・14組DJ)。詳細はホームページやSNSからチェック!https://the-hope.jp/

■THE HOPE 公式SNSアカウント

Instagram:https://www.instagram.com/thehope_fes/

Twitter:https://twitter.com/THEHOPE_FES

TikTok:https://www.tiktok.com/@thehope_fes

YouTube:https://www.youtube.com/@thehope_fes

LitLink:lit.link/thehope2024