衝突事故で「1両だけ大破」、欧州鉄道の隠れた課題 各国で成長した“新興鉄道”の車両調達に落とし穴?

AI要約

6月5日22時49分、チェコ共和国の首都プラハの東約120kmに位置する産業都市パルドゥビツェ付近で、民間の列車運行会社レギオジェットの夜行列車とコンテナ列車が正面衝突する事故が発生。夜行列車に300人以上の乗客がおり、4人が死亡、30人以上が負傷。

チェコ鉄道安全当局の調査では、夜行列車が信号を無視したことが原因とされ、列車は停止していたまま衝突。客車の構造が弱かった可能性も指摘されている。

事故原因の詳細は調査報告書を待たなければならず、工事が完了しても信号システムの改善が必要となっている。

衝突事故で「1両だけ大破」、欧州鉄道の隠れた課題 各国で成長した“新興鉄道”の車両調達に落とし穴?

 6月5日22時49分、チェコ共和国の首都プラハの東約120kmに位置する産業都市パルドゥビツェ付近で、民間の列車運行会社レギオジェットのプラハ発チョップ(ウクライナ)行き夜行列車RJ1021便と、コンテナ列車が正面衝突する事故が発生した。

 13両編成の夜行列車には約300人が乗車していたが、機関車の直後に連結されていた客車はくの字形に変形するほど激しく損傷し、乗客4人が死亡、30人以上が負傷した。ただ正面衝突にもかかわらず、双方の運転士は命に別状はなかった。

■2両目「だけ」押しつぶされる

 チェコ鉄道安全当局の最初の調査結果では、夜行列車が赤信号を通過したことが明らかにされ、異常に気付いた運転士が急停止させたが、対向してきた貨物列車のブレーキが間に合わず衝突したことが、現場付近に設置された監視カメラの映像でも確認されている。

 パルドゥビツェ駅周辺は、路盤を基礎から作り変える抜本的な改修工事を数年前から行い、ほぼすべての工事が完了したことから、事故発生6日前の5月31日に完成記念式典を開いたばかりだった。ただし、常時列車位置と速度を監視する欧州標準信号ETCSの導入は、2025年1月1日まで持ち越されており、既存の信号システムがそのまま使われている。

 事故の詳細な原因については事故調査委員会が発表する最終報告書まで待たなければならず、少なくとも数カ月以上を要することになるはずだ。

 ところがここに来て、妙な話が持ち上がってきた。事故で大破した客車の車体強度が弱かったことが、死傷者を出す原因となった可能性がある、とレギオジェット側が主張したのだ。

【写真】正面衝突事故で大破し横転した客車や事故時の衝撃を物語る乱雑な車内、意外にも損傷の少ない機関車…復旧作業現場の様子(16枚)

 前述の通り、この夜行列車の運転士は信号冒進に気付いて非常ブレーキを作動させ、列車は衝突直前に停車している。そこに停止できなかった貨物列車が衝突し、夜行列車を押し出す形となった。正面衝突には違いないが、実質的には停車していた列車に別の列車が衝突したのと同じ状況ということだ。

 その際、機関車の直後に連結されていた客車が、衝突によって機関車と3両目以降の車両に押しつぶされる様子が監視カメラの映像から確認できる。車体に十分な強度があれば、ここまで破壊されることもなく、死傷者の数も変わっていたかもしれない、というのがレギオジェット側の考えだ。