首都圏の2倍の料金に目がテン…「青森移住10年」でわかった"日本一の短命県&生活費バカ高"のカラクリ

AI要約

移住に成功するための覚悟や費用の必要性、現実との違いに直面することがあることを考慮する必要がある。

移住先での通勤距離や家賃の高さ、地元の飲食店の選択肢の限定など、予想外の現実に驚くことがある。

地方移住を成功させるためには、地元の魅力を活用しながら新しい生活環境を楽しむ工夫が必要。

移住の成功・失敗を分けるものは何か。10年前に神奈川県から青森県へ移住し、現在、大学教員をする榮田いくこさんに現地に住んで驚いたことを挙げてもらった――。

■青森へ移住して10年、成功だったのか失敗だったのか

 筆者が首都圏から青森県に移住したのは10年前のこと。もともと青森県の生まれでしたが、転勤族だった父の都合と自分の進学、就職、結婚などで北日本から関東地方を転々とした後、体が弱ってきた親の住処に近いところで暮らすために西日本出身の夫とともに私が生まれた県に戻ってきた形です。

 その後、親は他界しました。移住の決意は容易ではありませんでしたが、最期の時期に寄りそう機会を多くもてたので、よかったと思っています。後悔はありません。

 「移住」は今、都市に住む人の重要関心事項のひとつです。内閣官房の調査(2020年、東京県在住者対象)によれば、全体の5割程度が地方移住に関心があると答えています。COVID-19感染拡大以降、リモートワークが普及したことも“移住願望”を後押ししているでしょう。

 一方、移住してみたら想定と大きく違う現実に直面したという話もしばしば見聞きします。移住に伴って、仕事や子供の教育環境、人間関係も大きく変化します。移住するにはそれなりの覚悟と費用が必要です。せっかくなら成功させたい。そんな人たちの考え方のヒントとなるべく、「青森移住10年」で筆者が驚いたことをランキング形式で5つ紹介します。

■5位:通勤距離3kmは「遠い」

 筆者が10年前に移住して住み始めた場所は、勤務先から約3kmの場所でした。複数の同僚に「どこに住んでるの?」と尋ねられて、「○○X丁目」と答えると、ほぼ全員に「遠いな」と言われました。ありえない、ということでした。

 移住前の首都圏の自宅から勤務先までは約20kmで、ドアツードアで電車も利用して約1時間。だから、3kmはすごく近く感じたのですが、感覚が全く異なるようです。筆者は移住後、職と住居も変え、現在は当初の移住先からさらに引っ越しして勤務地までの距離が約2.5km。天候が悪くなければ、自転車か徒歩で通勤するのですが、2.5km歩くと言うと、ほぼ全員が「うそでしょ」と怪訝な顔をします。歩いて移動するという発想がないのです。

■4位:賃貸物件の家賃が意外と高い

 地方では持ち家暮らしが主流で、賃貸物件に暮らすのは学生か転勤族がメインです。おそらく家族で暮らせる賃貸物件は借り上げ社宅(法人契約)が多く、そのせいか家賃が周辺の不動産相場より高く感じます。

 青森県内の前住地では、新築の建売戸建ては平均2500万円程度と首都圏に比べれば格安でしたが、3LDKの賃貸物件の家賃は新築で平均12万円程度。首都圏などに比べれば安いでしょうが、すごく安いとも思いません。そもそも賃貸物件が少ないことが価格設定の背景にありそうです。賃貸物件検索サイトなどを利用するとわかると思いますが、賃貸物件がほとんどない市町村も少なくありません。

 移住先の住居が築ウン10年の古民家級の物件でいいならともかく、ある程度の都市機能のある地域で賃貸暮らしを想定するなら、居住費はある程度見積もっておいたほうがいいと思います。

■3位:お勧めの飲食店を尋ねると9割が「ラーメン屋」

 青森県は三方を海に囲まれ、平地も山間部もあり、新鮮でおいしい食材がリーズナブルな値段で手に入ります。カロリーベースの食料自給率が100%を超えます。味噌や醤油メーカーもあり、県産品で食卓を容易に構成できます。

 特に魚介類はリーズナブルで、首都圏在住時は切り身を購入して作っていたアクアパッツァは、鯛やメバルといった魚をこちらでは1尾で購入して作るのが当たり前になりました。首都圏の切り身2切れ分の値段でまるごと1尾で買えますし、桃は旬の時期なら無人販売で3個100円です。昨今の物価上昇もあり、月の食費は首都圏時代と変わりませんが、移住後、我が家の食事のクオリティは確実に向上しました。

 筆者は調理好きですが、たまに外食したくなります。そこで、おすすめの飲食店を同僚などに尋ねると、答えは「ラーメン屋」が9割超でした。にぼしベースの出汁が効いたものや、みそカレー牛乳ラーメンという名物などがあり、とてもおいしいのです。ただ、せっかく食の宝庫なのにラーメン以外のお店が挙がらないのは不思議です。

 では、とネットで検索してみると、コースディナーを3000円以下で提供するフレンチや、地元の素材にこだわったピザ店、近隣の漁港の魚を使った居酒屋など、実はいいお店がたくさんあることがわかりました。ところが、地元の人の回答は「知らない」「行ったことない」。食材に恵まれると、かえって外食のバラエティを求めなくなるのでしょうか。10年経っても謎です。