柳井正ユニクロ会長兼社長「子どもに継がせない」発言が経済界に与えたインパクト

AI要約

ファーストリテイリングの会長兼社長である柳井正氏が、息子たちを後継社長にする考えを否定し、会社を公器として適任者を選ぶ姿勢を示している。

柳井氏は10年前にも同様の考えを示しており、今回の発言はその一貫性を保っているが、なぜ再びこの問題を取り上げたのかが疑問とされている。

経済界では、創業家出身だけでなく上場企業のトップになることで世襲を強行する例が多く見られるが、柳井氏の姿勢が変わりつつあることで、世襲に否定的な風潮が広がっている。

柳井正ユニクロ会長兼社長「子どもに継がせない」発言が経済界に与えたインパクト

【政官財スキャニング】#80

官界通(以下=官) カジュアル衣料の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(75)が、取締役に引き立てている息子たちを後継社長にしないと明言したが、経済界の反響はどうだ?

政界通(同=政) 6月28日付の朝日新聞のインタビュー記事だな。

官 そうだ。取締役の長男・一海氏(50)も次男・康治氏(47)も「絶対、経営者にしない」として「いい経営チームを選んで、その人たちが仕事できるようにする」と話したと載っていた。

財界通(同=財) これは、経済界にけっこうな衝撃を与えたよ。

政 そうだろう。柳井氏も社長になってもう40年。「世襲」の時期もそう遠くないとみていた経済人が、多いのではないか。

財 まあな。

■「会社は公器。世襲などとんでもない」と警告

官 柳井氏は、10年前にもニューヨークで取材を受けて、一部に出ていた「世襲」の見方を否定し、息子たちは「会長や副会長みたいなことをしてもらったらと考えている」と言って執行よりも監督の側に置く可能性を示していた。

財 よく知っているな。ただ、発言の内容は一貫しているが、なぜいま、それをまた持ち出したのか。14人いる上席執行役員たちを「社長候補」として、引き締めるためかな。

政 私は、2世や3世に選挙区を継がせる政治家と同様に、創業家出身というだけで「オーナー顔」をして子どもに継がせようという経営者たちに「会社は公器。上場していればなおさらで、世襲などとんでもない」と警告を発したと受け止めたいね。

財 経済界が受けた衝撃もそこだ。社名は言いにくいが、創業一族だといっても株式の一部しか持っていないのに、トップの威光で「世襲」を強行する例が後を絶たない。柳井氏が「世襲」を否定し切れば、強行しにくい空気が広がる。

官 いいことだ。「いまや会社のガバナンス(経営統治)が大事な時代」などと言っておきながら、「世襲」はそれに反する場合が多い。

政 永田町の政治家たちにも、柳井氏の発言を聞かせたいね。

(構成=竜孝裕/ジャーナリスト)