訪日客向け「二重価格」、全国の観光地や飲食店で設定の動き…円安で活況の反面「接客にコスト」

AI要約

コロナ禍が収まり、インバウンド需要が活況を取り戻している中、一部の飲食店では外国人客向けに高い料金を設定する“二重価格”が導入されている。

“二重価格”の導入事例や外国人客へのサービス提供に関する具体的な事例を挙げながら、外国人客向けの“割安感”と国内客への提供内容の違いについて報告されている。

観光地や姫路城入場料の例を挙げ、価格設定を巡る議論についても言及されている。

 コロナ禍が収まり、全国各地の観光地や飲食店はインバウンド(訪日外国人客)需要で活況を取り戻している。歴史的な円安などで、訪日客にとっては買い物にもサービスにも「割安感」が漂う中、一部では、国内客よりも高い料金を取る「二重価格」を設定する動きも。専門家は「『外国人だけ』という理由付けを明確に示す必要がある」と指摘している。(高田結奈、石間亜希)

 訪日客が行き交う東京・渋谷。今年4月にオープンした飲食店「海鮮バイキング&浜焼きBBQ 玉手箱」では、台湾から訪れた男性(32)が、男性スタッフから食材の食べ方について英語で説明を受けると、自らテーブルのコンロでホタテを焼き、サーモンの刺し身をほおばった。

 同店は、マグロやいくらなど約60品の食べ放題コースを、男性の外国人客には平日ランチで税込み7678円(ディナー8778円)で提供。日本人と国内在住者には、そこから1100円を割り引く事実上の「二重価格」を導入している。

 SNSの動画で同店を知ったという男性。「たいした金額の差ではないので気にはならない」と話し、「日本で食べるのはおいしい。店員の対応も良い」と満足した様子だった。

 同店では、入店時に日本語が話せるかどうかや在留カードの有無を確認し、外国人客かどうかを判断しているという。2割弱を外国人客が占めるため、4、5人の店員のうち必ず1人は英語が話せるスタッフを配置し、ビュッフェ台に載った食材の取り方や焼き方などを説明する。経営する米満尚悟社長(39)は「接客にかかるコストや時間で人件費が上昇することを踏まえると、価格差をつけざるを得ない」と話す。

 昨年度、過去最高の約45万人の外国人観光客が訪れた世界遺産・姫路城。その入場料(18歳以上1000円)を巡って、兵庫県姫路市が訪日客に限り4倍程度の値上げを検討すると表明し、波紋を広げている。

 「外国の人は30ドル払ってもらい、市民は5ドルくらいにしたい」。同市の清元秀泰市長は6月16日に市内であった国際会議で、値上げを検討する意向を示した。30ドルは現在、4000円台後半に相当する。瓦や漆喰(しっくい)の技術を継承する人材育成など城の維持・管理費用の捻出が目的だとし、清元市長は同17日の記者会見で「外国人向けの料金設定は、グローバルスタンダードだ」と理解を求めた。