「世界最強の重巡洋艦」どうしたら倒せる? デカい・速い・厚い・重武装! ただ残念な時期に登場?

AI要約

デモイン級は第二次世界大戦を戦訓にした唯一の重巡洋艦であり、最強の艦型とされている。

アメリカ側は、新型の203mm55口径Mk.16主砲を搭載したデモイン級を整備し、圧倒的な発射速度と威力を持つ艦となった。

203mmの砲弾重量や貫通力において、デモイン級は他国の重巡洋艦を凌駕していたが、最大射程距離には劣っていた。

「世界最強の重巡洋艦」どうしたら倒せる? デカい・速い・厚い・重武装! ただ残念な時期に登場?

 1948(昭和23)年に就役したアメリカ海軍の重巡洋艦「デモイン」級は、1919(大正8)年のイギリス重巡「ホーキンス」から始まった、重巡洋艦の最後にして最強の艦型でもあります。

「第二次世界大戦で最強の戦車」など、何が最強の兵器かを議論する場合、通常は議論が分かれることが多いですが、「最強の重巡洋艦」については、ほぼ議論が分かれません。これはデモイン級が、第二次世界大戦を戦訓にした唯一の重巡洋艦だからです。

 1941(昭和16)年に太平洋戦争が始まり、翌年にソロモン諸島で発生した日本とアメリカの艦隊戦では、夜戦の至近距離で大型戦闘艦同士が砲雷撃戦を交わす場面が度々見られました。

 その結果、アメリカ側の戦訓として、日本の巡洋艦や駆逐艦は抗堪性(敵の攻撃に耐える能力)が高く、簡単に戦闘力を奪えないという認識がありました。高速の大型艦同士で夜戦を行った場合、位置変化が大きく、ひとつの目標に長時間射撃することが難しいため、短時間に多数の命中弾を与える必要があると見なされたのです。

 それまでの重巡洋艦の203mm砲では射撃速度が遅く、軽巡洋艦の152mm砲は射撃速度こそ十分な反面、威力が足りないと判断されました。アメリカは1943(昭和18)年より、射撃速度が速い新型203mm砲を搭載した重巡洋艦の整備を検討。当時、大量建造されていた「オレゴン・シティ」級重巡や、新型152mm砲を搭載した防空巡洋艦「ウースター」級を変更したことで、「デモイン」級は12隻の建造が予定されたのです。

 最大の特徴は新型の203mm55口径Mk.16主砲でした。これは従来型の203mm砲が毎分3~4発の発射速度だったのに対して、自動装填装置とケース入り装薬を実用化することで、毎分10発もの発射速度を実現したのです。この主砲を3連装で3基9門搭載したので、2秒で3発の203mm砲弾を発射できました。

 重巡203mm砲の毎分発射速度は、日本が3~5発、イギリスが3~6発、フランスが4~5発、イタリアが1.5~3.8発、ドイツが4~5発でしたから、圧倒的な発射速度でした。砲弾の装填が全自動化されただけでなく、仰角-5度から41度までのどの角度でも装填可能であり、信管調定機構も備えていたため、限定的な対空射撃まで可能としていました。

 さらに、使用する砲弾重量は152kg。これは日本の110~125.85kg、イギリスの116kg、フランスの123.1kg、イタリアの110.6~125.3kg、ドイツの122kgより重く、威力で大きく勝っていました。従来型203mm砲弾が、射程距離15kmで152mmの貫通力に対して、152kgの砲弾は203mmの貫通力があったのです。30年前の第一次世界大戦でドイツが使った305mm50口径砲は、同じ15kmの貫通力が229mmですから、過去の戦艦主砲に近い貫通力があったわけです。

 ただ、砲の最大射程だけは2万7480mと短く、他国より2000~6000m程度劣っていました。なお、高発射速度を実現させるために、砲身のあいだにスイングアームや排莢装置を備えたため、砲塔が大型化し、砲塔重量が458トンになりました。前述したドイツ305mm連装砲は重量543トンですから、一昔前の戦艦主砲塔に近い重量を持つ砲塔といえます。