「成城石井」と「セブン“金の”シリーズ」の決定的な違い、セレブ客にアピールする“真逆の戦略”が深すぎる

AI要約

成城石井とセブン-イレブンの「金の」シリーズは、富裕層向けの商品展開を行っていますが、まったく異なる戦略を取っています。

成城石井は店舗数を増やし、富裕層へ多様な製品を提供しています。一方、セブンプレミアムゴールドは商品の品質に重点を置き、全体の店舗に展開して販売しています。

ローソンは店舗業態で戦い、異なる商品を異なるターゲットに提供する一方、セブンは商品のブランドを使い分けて消費者を呼び込んでいます。

「成城石井」と「セブン“金の”シリーズ」の決定的な違い、セレブ客にアピールする“真逆の戦略”が深すぎる

 SNSでも人気の高級スーパー「成城石井」とセブン-イレブンの「金の」シリーズ。「どちらも富裕層向けのマーケティングでしょ?」と思う方、実は、両社の動向を整理すると、深すぎる“真逆の戦略”が浮かび上がってくるのです(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

● ローソン傘下の成城石井とセブンの「金の」シリーズ 富裕層向けに優れているのはどちら?

 ローソンの100%子会社の成城石井と、セブン-イレブンが展開する「金の」シリーズで知られるPB商品のセブンプレミアムゴールドは、どちらも国内の富裕層が拡大していることに着眼したものです。ただ、両社の採用する戦略は正反対です。

 成城石井は富裕層をターゲットに彼らの生活動線に店舗を構えて、富裕層への多様な製品販売を狙います。一方でセブンプレミアムゴールドは国内すべてのセブン-イレブンおよびイトーヨーカドーなどの店舗に富裕層の好む上質な商品を配置して販売します。

 顧客接点の数では国内2万1000店舗超とセブンプレミアムゴールドが国内216店舗(2023年)の成城石井を圧倒する一方で、アイテム数では約5000アイテムを品揃えする成城石井.comが43の厳選アイテムを販売するセブンプレミアムゴールドを品数で圧倒します。

 接点を武器にする戦略と、品揃えに着眼する戦略、富裕層向けのマーケティングとしてはどちらの戦略が優れているのでしょうか?一緒に考えてみたいと思います。

● ローソンは「店舗業態」で戦い セブンは「商品戦略」を重視する

 さて、最初に双方の戦略をもう少し詳しく説明しましょう。

 ローソンには傘下に4種類のターゲットが異なるストアが存在します。

 一般的な消費者を対象にするのが青い看板で知られるコンビニの「ローソン」。オーガニックなど食の安全性やサステナビリティに敏感な消費者を対象にするのが「ナチュラルローソン」です。そして低価格でおトクに買い物をしたい消費者層には「ローソンストア100」、富裕層向けには「成城石井」があります。

 それぞれ異なる品揃え、異なる店舗業態で顧客を迎え入れるのがローソンの戦略です。

 それに対してセブン&アイ・ホールディングスではコンビニは「セブン-イレブン」、GMSは「イトーヨーカドー」、食品スーパーはヨークマートという形で業態別に店舗を設定して基本的にあまねく消費者を呼び込みます。

 さらにPB商品では異なる消費者ターゲット毎に異なるサブブランドで展開するのがセブンアンドアイの戦略です。

 具体的には一般ユーザー向けには「セブンプレミアム」や「セブンカフェ」、お得を追求する顧客には「セブン・ザ・プライス」、ナチュラル志向の顧客には「セブンプレミアムフレッシュ」や「セブンプレミアムライフスタイル」、そしてちょっと贅沢な消費がしたい人向けには「セブンプレミアムゴールド」というように、サブブランドで切り分けていくのです。

 このように店舗業態で戦うローソンに対して、商品戦略で戦うセブンという形で、同じターゲット層の顧客を狙っているにもかかわらず違った戦略を採用しているというのがこの戦いの興味深いポイントです。