博多織の老舗織元「西村織物」が工場改装しショールーム…「リッツ・カールトン」も納得の伝統美

AI要約

西村織物は福岡県筑紫野市にショールーム「ORIBA」をオープンし、伝統の技術を活かしながら新たな取り組みを続けている。

同社は昨年開業した高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」に博多織を提供し、他業種との交流にも積極的に取り組んでいる。

デザインや素材の見直しを行い、新型コロナウイルスの影響も乗り越えて新たな挑戦が実を結んだ西村織物の取り組みについて紹介されている。

 博多織の老舗織元「西村織物」が福岡県筑紫野市紫の本社内にある工場の一部を改装し、ショールーム「ORIBA」をオープンした。同社は昨年6月に福岡市中心部に開業した高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」の内装に博多織を提供するなど、伝統の技を生かしながら新たな取り組みを続けている。(白井貴久)

 西村織物は幕末期の1861年創業で、現存する最古の博多織の織元。かつては力士の化粧まわしなどを織っていたことで知られる。落語会とのつながりも深く、帯「鬼献上」は現在でも多くの落語家が愛用している。

 2016年に6代目の西村聡一郎社長(46)が就任。伝統工芸の枠にとどまらず、他業種との交流にも積極的に取り組んできた。

 ザ・リッツ・カールトン福岡には博多織800メートルを納入。プレミアムスイートの壁などに用いられており、バーでは天井付近からつるされた間仕切りが利用客を迎える。日本料理店の個室に設置された装飾は「あの博多織を見たい」と言って予約する人もいるという。

 西村織物に依頼があったのは、新型コロナウイルスの感染が拡大していた2020年のこと。通常、博多織には絹糸が用いられているが、今回は軽さが求められる内装のため、素材から見直した。デザインについても難航したが、古くから残してきた伝統的な柄を見せたところ、海外の担当者を納得させることができたという。西村社長は「コロナで売り上げが落ちた時期だったが、新たな挑戦が実を結んだ」と振り返る。

 また昨年は、博多織工業組合が太宰府天満宮に奉納した5メートルの「御旗」も手がけた。祭典の際に掲げられている。

 ショールームは工場の資料室に使っていた場所に設置し、広さは約150平方メートル。設計は、世界的に著名な建築家、隈研吾氏に師事した神谷修平氏が手がけた。

 内向きに大きなガラス窓が設けられており、機械が音をたてながら動く中、職人が行き交い、織物が完成していく様子を目の前で見ることができる。