表面を何度も張り替えて使うなんて当たり前! 乗用車用をデカくしたものかと思いきや「トラック用タイヤ」はまったく別の性能が込められていた

AI要約

タイヤはクルマを支え、駆動力や制動力、コーナリングフォースなどを路面に伝える唯一の部品だ。

乗用車用とトラック用では求められる特性や性能がかなり異なり、タイヤの設計や使用方法も異なる。

更生タイヤは環境にも優しく、トラック用では2割以上が利用されている。

表面を何度も張り替えて使うなんて当たり前! 乗用車用をデカくしたものかと思いきや「トラック用タイヤ」はまったく別の性能が込められていた

 タイヤはクルマを支え、駆動力や制動力、コーナリングフォースなどを路面に伝える唯一の部品だ。レースシーンなどでは加速性能やラップタイムはもちろん、一般道での乗り心地など、その性能や優劣はタイヤが最終的には決定づける。信頼性や安全性もタイヤ次第という訳だ。

 そんなタイヤだが、乗用車用とトラック用では求められる特性や性能がかなり異なる。乗用車用はドライ/ウエットでのグリップ性能や燃費に影響する転がり抵抗、静粛性や乗り心地などの快適性能などが重視される。

 一方、トラック用は車両重量よりも重い荷物を積んで運ぶため、タイヤには耐荷重性能がまず確保され、走行距離が多いので耐久性や耐摩耗性が優先されることになる。車重や積載重量があるトラックは、乗用車と比べると接地面にかかる荷重が大きく、グリップ性能は自然と高まるので、むしろ耐久性や耐摩耗性のほうが問題となるのだ。

 さらに、トレーラー用タイヤはどうだろう。中間の軸に装着されるタイヤは前後端のタイヤに比べて、カーブでは捩れる力が働き、小まわりでは横に滑らせるほどの力がタイヤに加わる。そのため、トレッドゴムが千切れてしまわないよう、ショルダー部は縦方向のグルーブだけが入っているだけで、横方向には溝を設けないことで強化したショルダーデザインになっているのだ。

 耐久性と強度を持たせているのは信頼性を確保するためだが、最近は更生タイヤ(トレッドゴムを張り替えて再使用するタイヤ)とするために、新品時からより高い強度を誇る構造が採用されているタイヤも増えている。これにより、従来は1回しか張り替えられなかった更生タイヤが2回、3回と複数回張り替えることが可能になっている。

 乗用車でもかつて再生タイヤは存在していたが、低扁平化によってタイヤ全体の性能が低下していくことや、クルマの高性能化もあって、現在ではほとんど見かけなくなった。

 しかし、トラックの場合、乗り心地などはキャビンやシートのサスペンションで確保しているから、タイヤについては乗り心地よりも強度が優先となる。それゆえ、昔から限界まで摩耗したタイヤは専門業者が回収して点検し、構造部分は問題ないと判断すれば、リトレッド(トレッド表面を張り替える)して再生タイヤとして利用するケースも多かったのだ。

 更生タイヤは環境にも優しいことから、これからも普及率は高まっていくだろう。ちなみに更生タイヤのリトレッド方法にはあらかじめトレッドデザインが表面に形成されているゴムを貼り付けて高温高圧で一体化させるプリキュア方式と、板状の生ゴム(加硫前の合成ゴム)を貼り付け、金型に入れてトレッドデザインを形成するとともに一体化させるリ・モールド方式があるが、プリキュア方式のほうが一般的だ。

 日本国内には更生タイヤの工場が38カ所もあり、いまやトラック用タイヤの2割以上が更生タイヤとして利用されている。乗用車用タイヤのほうが、設計技術などでは高度化されている印象だが、トラック用タイヤも設計やシミュレーション技術などで構造やデザインを最適化しているのだ。