F1業界はなぜこれほどまでに閉鎖的なのか? 経済効果は莫大も、「新規参入」を巧みにブロックする既得権構造とは

AI要約

本記事ではF1の歴史、閉鎖的な構造、新規チーム参入の難しさに焦点を当て、F1の未来に向けた可能性を探る。

F1は歴代チャンピオンだけでなくコンストラクターズ・チャンピオンも重要であり、チーム力向上につながる多額の賞金やボーナス制度が存在する。

現在のF1では支出上限が設けられ、競争は激しさを増しており、公平な戦いが展開されている。

F1業界はなぜこれほどまでに閉鎖的なのか? 経済効果は莫大も、「新規参入」を巧みにブロックする既得権構造とは

 本連載「開かれたF1社会とその敵」では、F1の歴史と閉鎖的な構造に焦点を当て、変化の可能性を探る。F1の成長とともに形成された独自の「F1ムラ」における利益と利他の対立、新規チームの参入の難しさ、そしてオープンな社会への道筋を検証する。F1の未来と進化に向けた具体的な可能性を示し、閉鎖的な構造からの脱却戦略を提案する。

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 F1世界選手権は、国際自動車連盟(FIA)が主催する世界最高峰の自動車レースである。個人タイトルのドライバーズ選手権は1950年から、製造者同士が競い合うコンストラクターズ選手権は1958年から始まった。

 プロスポーツには適正なチーム数が存在するが、基本的な流れとしては参加チーム数を増やす、つまり拡大傾向にある。しかし、F1では米国のアンドレッティ・フォーミュラ・レーシングが11チーム目として参戦しようとしているが、F1を管理・統括するフォーミュラワン・マネジメント(FOM)は2026年まで認めないとしている。

 なぜ世界の潮流に逆行するのか。歴史と構造から考えてみよう。

 製造者同士が競い合うコンストラクターズ選手権が創設された理由はいくつかあるが、その目的は、技術力を向上させることなどにある。

 F1が始まってから年月がたち、その地位が高まるにつれて、世界中の自動車メーカーが参戦に興味を示すようになった。自社技術をアピールし、名前を広めることができるからだ。また、チャンピオンになることでブランド力のさらなる向上も期待できるし、F1全体から見れば、さまざまなコンストラクターが参戦することで、多様性が生まれることにつながる。

 実際のところ、F1の歴代チャンピオンをいえる人はたくさんいるが、コンストラクターズ・チャンピオンをいえる人はなかなかのF1マニアである。しかし、この選手権はチーム力向上には欠かせないタイトルである。なぜなら、最終順位に応じて、多額の賞金がチームに分配されるからだ。

 それはマシン開発に使われるだけでなく、スタッフのボーナスにも反映される。年功序列の働き方がない海外では、転職によるキャリアアップが普通だ。ボーナスの支給は、会社への忠誠心やモチベーションを高める大きな要因となっている。

 加えて、現在のF1では支出に上限が設けられているため、戦う土壌はかなり公平になっている。そのため、競争は激しさを増しており、これは優秀なスタッフを確保するという観点からも重要である。