現存1両「攻撃力に全振り」激レア戦車 ついに動けるまでに 動画で公開

AI要約

イギリスのボービントン戦車博物館がFV4005駆逐戦車を復元し、その特徴や難点、復元の過程について紹介。

FV4005はIS-3戦車を撃破可能な183mm砲を搭載し、装甲厚や速度の問題を抱えていた。

博物館はオリジナル部品を使用し、資金調達にクラウドファンディングを利用してFV4005を復元し、Tank Festで走行させた。

現存1両「攻撃力に全振り」激レア戦車 ついに動けるまでに 動画で公開

 世界屈指の軍事博物館であるイギリスの「ザ・タンク・ミュージアム」、通称「ボービントン戦車博物館」は2024年6月27日、公式ウェブサイトおよびX(旧Twitter)やFacebookなどで「FV4005」駆逐戦車の復元が完了したと発表しました。

 FV4005は、イギリスが1950年代に開発した戦闘車両で、自国製の「センチュリオン」戦車の車体に砲塔形式で183mm砲を搭載しているのが特徴です。この砲は、戦車砲としては史上最大で、ソ連(現ロシア)の強力なIS-3重戦車を撃破可能な直射砲として作られました。

 しかし、大きすぎて砲弾の人力装填は不可能。ゆえに砲塔内部に補助装填装置を装備したものの、装填手は2名必要でした。

 しかも、あまりにも砲塔が大型化したため、重量を軽減するために砲塔の装甲厚はわずか14mmしかありませんでした。この厚さでは12.7mm重機関銃ですら貫通してしまうほどだったそう。しかも、砲塔は全周旋回ができず、射角は左右90度までに限定されたといいます。

 それでも重量は50tあったため、最大速度は30km/hしか出ず、兵器としては使い勝手が悪すぎたことから1957年8月に開発は中止され、試作車1両が造られただけで終わっています。

 FV4005は、いうなれば対戦車自走砲ですが、前出したような車両ゆえに砲塔が1970年代に「ザ・タンク・ミュージアム」へ寄贈され、その後予備の「センチュリオン」戦車の車体に組み合わされる形で復元。2008年以降は、博物館のゲートガードとして屋外展示されていました。

 

 ただ、この車体と砲塔の組み合わせはあくまでも暫定であったため、オリジナルとは異なる部分がいくつもありました。

 そこで「ザ・タンク・ミュージアム」は、残っているオリジナルの砲塔を修復し、シャシーに用いられている「センチュリオン」の車体もオリジナル同様の「Mk3(マーク3)」に換装することを決定。しかも、砲架や各種装備品なども作り直すことにしたのです。

 資金調達にはクラウドファンディングを使用。2万ポンド(日本円で約400万円)をそれで集め、残りの金額は博物館のスポンサー企業である世界的オンラインゲーム企業「Wargaming(ウォーゲーミング)」が協力することで賄われた模様です。

 公開された映像を見ると、主砲の支持架を始めとした各種小物だけでなく砲塔内部も塗装まで含めて修復されている様子が見て取れます。

 

 なお、こうして復元されたFV4005は、このたび開催された「Tank Fest 2024」において博物館のグラウンドを自力で走行していました。