【大安場史跡公園】学びと観光 両立に期待(7月3日)

AI要約

郡山市は、国の史跡「大安場古墳」を中心とした史跡公園の保存と活用に向けた計画づくりを進めている。歴史情報博物館が開館し、史跡公園の展示を大安場古墳と近隣遺跡に特化する。古墳時代の営みを伝え、集客力が高まる施設を目指している。

大安場古墳は東北最大級の前方後方墳で、4世紀後半に造られた国史跡。古墳内からは阿武隈川流域を治めていた豪族の存在が窺える。

阿武隈川東側には正直古墳群などの古墳群や遺跡が点在し、石製模造品や豊富な埋葬施設が注目されている。保存活用計画策定委員会は史跡公園の展示を大安場古墳と正直古墳群に絞り、魅力を際立たせたいとしている。

 郡山市は、国の史跡「大安場古墳」を中心とした史跡公園の保存と活用に向けた計画づくりを進めている。市歴史情報博物館が来年開館するのに伴い、史跡公園の展示を大安場古墳と近隣遺跡などに特化する。東北地方南部の古墳時代の営みを特色ある展示で伝え、集客力も高い施設となるよう求めたい。

 大安場古墳には、4世紀後半に造られた全長約83メートルに及ぶ東北最大級の前方後方墳がある。2000(平成12)年に国史跡となり、史跡公園は2009年に開園した。埋葬された人物は阿武隈川流域を治めていた豪族とされ、副葬品から大和政権と深い関係があったとみられている。

 阿武隈川東側には大善寺、中山田、南山田、北山田といった古墳群や遺跡が点在している。大安場古墳の南西約2キロにある正直古墳群には全長約37メートルの前方後方墳があり、大安場古墳との関係性が推測される。石製模造品と呼ばれる祭祀[さいし]遺物が数多く出土し、石棺をはじめとする多彩な埋葬施設が注目されている。

 現在の展示は古墳時代に焦点を当てながら旧石器、縄文、弥生時代など市内で見つかった遺物を広く扱っているが、今後は博物館がその役割を担う。史跡公園の展示について、保存活用計画策定委員会は大安場古墳と正直古墳群などに絞り、史跡の魅力を鮮明にしたいとしている。2026(令和8)年3月に素案を決定し、文化庁の認定を目指す。来園者が古墳時代の安積の地に思いをはせ、先人の足跡もしのべるような学びの多い内容にしてほしい。

 年間5万人前後で推移してきた来園者は、新型コロナ禍で3万人程度に落ち込んだ。昨年は小学生らの利用が増えて約3万6千人にまで回復した。ただ、中高生の来園はほとんどないのが寂しい。市教委や各高校への利用呼びかけとともに、発掘や野焼き、火おこしなどの体験型学習を拡充させるなどして博物館との差別化を図る必要がある。近隣の古墳を巡る散策イベントも充実させたい。

 郡山市は、阿武隈川を挟んで西側に安積開拓や安積疏水に関する日本遺産、東側に大安場古墳をはじめとした多くの古墳群が残る。東西の貴重な歴史資源を有機的に結び、観光につなげる取り組みも進めるべきだ。(湯田輝彦)