「ミスをするな」で減るのは「報告数」だけだった...「保守的な」会社で同じミスが「頻発する」納得のワケ

AI要約

アントレプレナーシップとは、失敗を認め、奨励し、イノベーションを促進することが重要である。

失敗の原因の究明は重要だが、失敗の責任を問わないことが大切である。

責任追及よりも、失敗から学び、次につながるポジティブなエネルギーを見出す姿勢が必要である。

「ミスをするな」で減るのは「報告数」だけだった...「保守的な」会社で同じミスが「頻発する」納得のワケ

近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。

本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。

『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第34回

『「大物司会者」に強引な押し売り!?...「ディズニークルー」が「ビリオネア」へと変貌!隠された驚愕の「秘密」』より続く

企業の寿命は30年、それ以上生き残った企業では社内起業が行われ、主事業が変わっているものです。これができるのは、「失敗を認められる企業」、もっというと、「失敗を奨励する企業」です。失敗を恐れる企業、失敗をマイナスと捉え、それを非難する企業では社内起業は起こりません。起業できるような人材は流出してしまいます。

では、どのような組織が失敗を認め、奨励し、イノベーションを起こせるのか。これは組織の話だけではなく、起業家自身にもいえることになります。

それは、失敗の原因を究明することは重視しても、失敗の責任は問わないこと、です。失敗の原因は明らかにしなければなりません。そこから発見もあれば、次に活かせる教訓も出てきます。しかし、担当者のせいにして責めたりしても、何も生まれません。生産性はゼロです。それよりも、どんな失敗からも「価値」を見出すこと、次につながる「正のエネルギー」を探求することが大事です。スポーツの負け試合も、ゲームセットの仕方によって、明日につながる終わり方というものがあります。

ある銀行でシステム障害が発生しました。その銀行では担当者に処分を下しました。世間に対して、それを公表し、経営陣も減給したと発表しました。

これで「責任を取った」というわけです。ですが、障害の原因についてはまったく究明されません。だって、責任は取ってあるのですから、それ以上は何も必要がないというわけです。そもそも、処分された担当者に本当に責任があったのかも検証されません。結果、システム障害がその後も頻発することになります。

――実はこれはたとえ話なのです。相当昔に思いつき、前著でも書いたものです。ところが、いま、この話を読んだ多くの人は、ある特定の銀行が頭に浮かんでいるでしょう。

たとえ話にするくらい極端な例、ある意味「そこまでひどい話はないよ」と思える話にしたつもりだったのですが、現実は、残念ながらもっとひどかったようです。くだんの銀行では、障害が起きたら「原因を究明して、再発防止」をするのではなく「犯人を探して責任を取らせる」ことに主眼が置かれてきたのではないでしょうか。これでは、明日につながりません。