日本人の「消滅危機」がいよいよ現実に…豊かであり続けるための「たったひとつの方法」

AI要約

国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、2070年には総人口が約8700万人、2120年には5000万人を割る見込み。

未来の年表 業界大変化では、人口減少による影響と対策を明確に示し、日本企業が外需に対応し国内外でのビジネスモデルを変える必要性を強調。

日本企業は国内マーケットと海外展開の両面での準備が求められ、従来のビジネスモデルに固執せず、変化に柔軟に対応する必要がある。

日本人の「消滅危機」がいよいよ現実に…豊かであり続けるための「たったひとつの方法」

 国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

 ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

 『未来の年表 業界大変化』第1部では、瀬戸際にある日本で各業界や職種にどんな「未来」が待ち受けているかを可視化した。紙幅の限界もありすべてを取り上げられなかったが、各職種や業務内容に照らし合わせていただければ、それぞれの「未来」がおおよそ見えてこよう。

 「人口減少」というのは即効性のある対応策がないだけに、言葉を聞くだけで気持ちが沈むという人も多いだろう。それは従来の社会常識、過去の成功体験にとらわれているからだ。日本人が消滅せんとする、我が国始まって以来の危機なのである。昨日までと同じことをしていてうまくいくはずがない。現状維持バイアスを取り除き、社会の変化に応じて発想を変えたならば違った未来が見えてくる。その先にこそ、人口減少に打ち克つ方策があるのだ。

 誤解がないよう予め申し上げるが、「人口減少に打ち克つ」というのは、どこかの政治家が選挙公約で掲げるような「人口減少に歯止めをかける」という意味ではない。

 過去の出生数減の影響で、出産可能な年齢の女性はすでに減ってしまっており、今後もどんどん少なくなっていく。日本の人口減少は数百年先まで止まらないだろう。この不都合な事実を直視するしかない。

 すなわち、ここで言う「人口減少に打ち克つ」とは、人口が減ることを前提として、それでも日本社会が豊かであり続けられるようにするための方策を見つけ出すことだ。社会やビジネスの仕組みのほうを、人口減少に耐え得るよう変えようというのである。

 日本は、諸外国と比べて外需依存度の低い国である。一般社団法人日本貿易会の「日本貿易の現状2022」によれば、2020年の貿易依存度(GDPに対する輸出入額の割合)のうち輸出財は12.7%である。コロナ禍前の2011~2019年を見ても12~14%台で推移してきた。ちなみに、2020年のドイツは35.9%、イタリアは26.3%、カナダは23.8%だ。

 もちろん、日本企業の技術力が低くて海外では製品やサービスが売れないために低いわけではない。むしろ高い技術力を誇っている。日本は「加工貿易国」ではあるが、多くの企業は、あえて海外で利益を上げなくともやってこられたということだ。日本は世界11番目の人口大国であり、国内需要だけで十分経営が成り立ってきたのである。

 しかも、日本は外国人が極端に少ない“同質的な社会”である。2020年の国勢調査によれば日本人人口1億2339万8962人に対して、274万7137人と2.2%ほどに過ぎない。国内マーケットは日本語というバリアによって守られ、外国企業の攻勢にさらされることが少なかったということである。

 このように恵まれた環境に安住してきた日本企業の多くが、人口減少によって安定経営の源であった“虎の子のマーケット”を手放すのである。天地がひっくり返るような一大事に直面しているのだ。

 しかも『未来の年表 業界大変化』が繰り返してきた通り、それは単に実人口が減るだけでは済まない。高齢化に伴って1人あたりの消費量が減るというダブルでの縮小である。経営者の大半は人口減少の影響を想定しているだろうが、多くの人がイメージするより変化は速く、かつ大きくなりそうだ。

 営利企業の場合、業種を問わずいずれ外需の取り込みを図らなくてはならなくなるだろう。だが、闇雲に挑んで行っても、生き馬の目を抜く外国企業との競争の前に淘汰されるのがオチだ。何事も準備が肝要である。

 一方、縮小するからといっても国内マーケットはしばらく1億人規模を維持する。早々と見切りをつけるわけにはいかない。何より国民の安定的な暮らしの維持を優先されなければならない。

 いま日本企業に求められているのは、(1)国内マーケットの変化に合わせてビジネスモデルを変える、(2)海外マーケットに本格的に進出するための準備を整える──という二正面作戦である。

 国内マーケットの縮小と同時進行で勤労世代は激減していくので、この先、国内だけで勝負するにしても、人口が増えていた時代の経営モデルのままでは立ち行かなくなる。無駄な抵抗を続けて時間をいたずらに消費するようなことはせず、思い切って変わったほうが展望を開きやすい。

 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。