「テンバガー・ハンター」の運用担当者に聞く10倍株の見つけ方! 日本のテクノロジー分野や欧米の銀行株に注目だ

AI要約

「テンバガー・ハンター[フィデリティ・世界割安成長株投信]」は、世界の割安成長株に投資する投資信託で、ファンドマネージャーへのインタビュー記事を通じて、今後の投資環境や視点が明らかにされている。

ファンドは中小型株に焦点を当て、割安な銘柄を見つけるために独自の情報網を活用しており、特に金融セクターや日本のテクノロジー分野に注目している。

また、日本の中小企業や特定銘柄に対する深い洞察も持っており、長期的な視野での投資戦略を重視している。

「テンバガー・ハンター」の運用担当者に聞く10倍株の見つけ方! 日本のテクノロジー分野や欧米の銀行株に注目だ

 「テンバガー・ハンター[フィデリティ・世界割安成長株投信]」はその名の通り、世界の10倍株の原石を見つけて投資する投資信託だ。テンバガー・ハンターを運用するフィデリティ投信のファンドマネージャーへのインタビュー記事をお届けする! 

 「テンバガー・ハンター[フィデリティ・世界割安成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)]」は「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」の、「フレッシャー賞」の世界株部門で最優秀賞に輝いた。「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ」は、NISAで買える成績優秀な投資信託をダイヤモンド・ザイ編集部が公平・中立な立場で審査し、表彰するもの。テンバガー・ハンターは、日本での設定は2020年だが、米国では34年の歴史があり、設定来の運用成績はなんと65倍! 

 割安成長株に投資するという投資哲学は一貫しており、2000年前後のITバブル時は、指数より成績が50%超下がっても運用方針を変えなかった。そのぶん、バブルが崩壊した後の回復は早かった。

 現在はモーゲン・ペックさん、サム・シャモビッツさん、2人で共同運用している。サムさんは13年間の日本滞在経験がある日本通でもある。久々に来日した2人に、現在の投資環境について聞いた。

●「テンバガー・ハンター」は米国株を割高と判断! 

日本や欧州、アジアの株が割安で魅力的

 ──足元のグローバルな投資環境をどう見ていますか。

サム 慎重ながらも楽観視しています。世界的にインフレは落ち着いていますが、金利は高止まったままです。また地政学的な緊張は依然として続いています。しかし、米国企業の業績は若干低迷しているものの、健全なレベルにあります。

 このような環境でも銘柄によって投資機会は十分にあります。

 ──国や地域では、どの辺りに投資チャンスを感じていますか。

モーゲン

 いまは米国よりもその他の地域に投資妙味があります。日本や英国をはじめとする欧州は、米国に比べ株式市場全体が割安です。 米国はAIブームによって、テクノロジー銘柄を中心に株価が熱気を帯び割高になっています。質がよくて株価が割安な銘柄を探すなら、米国以外のほうが投資チャンスは大きくなっています。

──とはいえ、運用している「テンバガー・ハンター」

は半数が米国株で占められます。モーゲン

 参考指標のMSCIワールド・インデックスと比べると、米国の比率は低めです。この1年は米国の比率を下げアジアへの投資を増やしました。──アジアといえば、日本でもインド株の人気が高まっています。

モーゲン

 インドをはじめ新興国への投資は配分を高めています。ただし新興国は期待も高いですが、リスクもそれなりに高いことを念頭に置いておく必要があります。株式市場、地政学、通貨つまり為替など多くのリスクがつきまといます。 インドは中産階級が拡大しており、その恩恵を受ける銘柄もありますが、市場全体としてはかなり割高だと感じています。

●フィデリティ独自の情報網で小型株を発掘! 

情報が少ないほど大化けするチャンスがある! 

 ──中小型株に多く投資しています。狙いを教えてください。

モーゲン

 私たちは、成長していてみんなが注目している銘柄よりも、質のいい企業でありながら株価が割安な銘柄を探しています。大型株は収益力のわりに割安な銘柄は多くありません。他の人が見逃している中小型株に割安株は多くあります。 株価が割安な背景にはいくつも理由があります。株式市場に事業内容が理解されていないとか、成長力が誤解されているとか。不要な不安によって一時的に株価が割安になっていることもあります。

 足元ではメガと呼ばれる大型株1割、中型株2~3割、小型株6割の比率で投資しています。

 ──魅力的な小型株を見つけるのは難しくありませんか。

サム 小型株は、金融機関のアナリストはほとんどカバーしておらず、我々独自の情報網を用います。

モーゲン

 米国では、大型株は平均25人のアナリストがカバーしていますが、小型株は5人くらい。米国以外だと小型株をカバーしているアナリストはもっと少なくなります。 投資の世界では、情報が知れ渡れば知れ渡るほど、株価が適正に評価されます。小型株はアナリストがカバーしていないため情報が少なく、非効率性が存在します。そういうものに投資をすると、後に大きなリターンを得やすくなります。

 ──カバーしているアナリストがゼロという企業も投資対象になるのでしょうか。

モーゲン

 もちろん! それがこの仕事の醍醐味でもあります。 たまたま魅力的な会社を見つけたときは最もワクワクする瞬間です。社内のアナリストに声をかけて調査してもらい、私自身も会社を訪問して成長力を確かめます。

 そのため頻繁に出張しています。オーストラリアや中国、インドなど世界中を飛び回り、経営陣と面会しています。

 ──割安株は株価が上昇するまでに時間がかかりませんか。

モーゲン

 はい、割安株投資には忍耐強さが必要になります。だからこそ買い時も重要。私たちは投資対象になり得る銘柄のリストを常に持っていて、何らかのショックやイベントで株価が割安になるときを待ち構えています。 もしくは今後上昇しそうなテーマの銘柄に投資しても、株価が一直線に右肩上がりで上がっていくわけではありません。

 長期的な視野で忍耐強く運用することが求められます。

●金融セクターは世界的に投資チャンスあり! 

特に欧州の銀行の株価は割安! 

 ──セクター(業種)ではどの分野が有望でしょうか。

モーゲン

 金融は米国のみならず世界的に投資チャンスが出ています。サム 金融危機以来、銀行は当局の規制強化に対応して15~16年かけて資本を増強し、バランスシートを健全化させてきました。それでも市場からは敬遠されたまま、いまだに株価は割安です。とりわけ欧州の銀行はPERが5~6倍の銘柄があり投資チャンスと捉えています。

モーゲン

 銀行は規制対応にコストがかかり、市場から敬遠された側面もあります。米国地銀の破綻もあり、株式市場はまだ銀行がうまくやれるという確信を持てていないようです。ハイテク銘柄ばかりが注目され、その陰で見逃されてきた面もあります。サム 銀行の経営陣は収益を株主還元に回していて、配当利回りは高いし自社株買いも行っています。株価が上がらなくてもこれだけで十分に魅力的です。

 特に米国と欧州の金融機関への投資は増やしています。

 ──他の業種はどうですか。情報技術もかなり組入れられています。

サム テクノロジー関連は以前に買ったものが、だいぶ残っています。テクノロジー銘柄はコロナの影響で在庫が過剰になり、市場から敬遠されていた時期があります。そのときに台湾TSMCやマイクロン、デルなどに投資しました。

 ただし、いまでは米国のハイテク銘柄は割高になっています。日本のテクノロジー銘柄のほうが割安なものが多いと感じています。

●ルネサスはバランスシートが健全な割に株価は割安! 

日本のテクノロジー分野が有望! 

 ──日本の株式市場についてもお聞かせください。

サム 日本には膨大な投資機会があります。経済規模が大きく、大手から中小企業まで数多くの企業が上場しています。

 収益性もいいし、バランスシートも健全、経営陣も優秀です。でも、以前は資本効率をさほど考えておらず、稼いだ現金が会社の中に貯まっていました。

 ──サムさんは13年間も日本に在住されていたのですよね。日本企業は変化したのでしょうか? 

サム だいぶ株主にフォーカスを当てるようになったと思います。以前は簿価が安い資産や豊富な現金がバランスシートに計上されたまま、有効に使われていませんでした。

 ここにきてようやく、株主価値や資本の効率性などについて考えるようになっています。その道のりはまだ始まったばかりで、今後ますます資本効率は上がると思います。

 ──日本における業種はどの辺りが魅力的でしょうか? 

サム テクノロジー分野が有望です。コロナでデジタル化が進み、システムインテグレーター(SI)やソフトウエアの会社が恩恵を受けていますが、米国ではその分野は株価がかなり割高になりました。

 それに対して日本のテクノロジー銘柄にはまだ割安感があります。例えば、ルネサスなどはバランスシートが健全なわりには株価が割安です。

●伊藤忠商事はバフェットの大量保有が

明らかになる前から注目していた! 

 ──日本の中小型株も投資対象になるのでしょうか。

サム はい。グローバルな投資家から見ると、日本企業は整理統合が進んでおらず、とりわけ中小企業でその傾向が顕著です。日本の中小企業では15年前よりももっと後継者が不足しており、承継問題がクローズアップされています。

 となると、今後は戦略的なM&Aやファンドによる買収が増えることが想定されます。こうした動きは投資家にとってはプラスになります。

 ──これまでに日本の投資先で印象的だった会社はありますか? 

サム 伊藤忠商事ですね。私たちは、バフェット氏よる大量保有が明らかになるよりも前に、伊藤忠の岡藤正広CEOに面会しています。

 ROEも2ケタだし、扱う商材もコモディティから、より高品質なものにシフトさせています。株主還元においてもリーダー的な存在で、長期にわたりずっと保有しています。

 割安成長株への投資は成果が出るまでに時間がかかることも。米国では34年で65倍と驚異の運用実績を残しているだけに、長い目線で持ちたい一本だ。

※「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」とは? 

月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』では毎年、良い投資信託を表彰。第2回となる今回は、“新NISAで買える”好成績のアクティブ型投信30本を表彰した。本グランプリの特徴は、「5年以上の運用成績があり、みんなが買っている分野・投信に限定し、1.どれだけ上がったか(成績)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの基準で選定している点。完全な実力主義で評価し、「個人投資家にとって本当にイイ投資信託」かという点にこだわっている。特別枠として5年未満の好成績投資信託を厳選し、フレッシャー賞を設けている。

 ※本記事は「ダイヤモンド・ザイ」2024年8月号から一部抜粋・再構成したものです。