クルマ好きが言う走りなら「ミッドシップ」って本当? そんなにいいのに採用車が少ないのはナゼ

AI要約

F1マシンをはじめ本格的なレーシングカーやスポーツカーの駆動方式は、ミッドシップが主流であり、そのメリットは加速性能、制動力、コーナリング性能の向上につながる。

ミッドシップ配置のエンジンは車体の中央に配置されるため、質量の中心が近く、コーナーリング時のヨーを制御しやすくしている。

しかし、ミッドシップには乗車定員や荷物の積載量の減少、静粛性の低下などのデメリットもある。

クルマ好きが言う走りなら「ミッドシップ」って本当? そんなにいいのに採用車が少ないのはナゼ

 F1マシンをはじめ本格的なレーシングカーやスポーツカーの駆動方式は、ミッドシップが主流だ。クルマの部品のなかでもひときわ重いエンジン並びにミッションが、車体の中心に近いというのがその1番の特徴で、運動性能を追求するには最適なレイアウトといわれている。

 そのメリットをひとつひとつ確認してみよう。

 MR=ミッドシップエンジン・リヤドライブの場合、駆動輪であるリヤタイヤのすぐそばに重たいエンジンを積んでいるので、駆動輪に十分荷重がかかって、トラクションがかかりやすく、ハイパワーを受け止めやすい車体になるので、加速性能が良好。

 クルマというのは、ブレーキを踏むと前のめりになる。つまり、フロントに大きな荷重がかかり、リヤの荷重が抜け気味になるが、車体後部にエンジンがあるミッドシップは、フルブレーキングをしたときにも、エンジンの重さでリヤの荷重が抜けない。

 したがって4つのタイヤがしっかり地面に設置したままビッグブレーキが可能で、しかもより太いリヤタイヤが最大限制動力を発揮するので、より短距離で制動を終えることが可能。

 そして何よりコーナリングがいい。

 エンジンが車体の中央付近にあるということは、質量の中心がクルマの中央に近いということで、Z軸まわりの慣性モーメントが小さいのが特徴。その結果、より小さなきっかけでヨーが発生し、より小さな力でヨーを収束させることが可能になる。

 つまり、簡単に曲がり始めて、アンダーステアが発生しにくいので、コーナーは得意。

 というわけで、ミッドシップはクルマの運動性能の基本、「走る(加速)」「止まる」「曲がる」の3つとも優れているので、運動性能優先であれば、ミッドシップに辿り着くというわけだ。

 ただし、ミッドシップにもデメリットはあり、車体の中央にエンジン・ミッションが偉そうに鎮座しているので、乗車定員が減ってしまうし、荷物の積載量も少なくなってしまう。

 また、FF車用のパワートレインをミッドシップに流用すると、コストダウンには有利だが、ミッションと一体になっているぶん、エンジンの重心が高くなり、ロールモーメントが大きくなるので、スポーツカーらしさ、運動性能はスポイルされてしまう。

 さらに、ドライバーのすぐ後ろにエンジンがあるので、静粛性もほかの駆動方式より不利とされるが、これは主観的な問題なので、好き嫌いで考えればいい(耳の位置とエンジンとの距離が近いのもあるが、エキゾーストのレイアウトを長くはとれないのでそれも消音を難しくしている)。

 このように、ミッドシップであれば、それだけで偉いわけではないが、居住性や実用性を犠牲にし、コストも惜しまず、重心が真ん中に集まっていて、しかも重心が低く、オーバーハングが短く軽いミッドシップなら、運動性能はピカイチ。

 そういう意味では、アンダーフロア型ミッドシップレイアウトを採用した、トヨタの初代エスティマは、ミッドシップのメリットを活かしたよくできた画期的なミニバンだった。

 2代目からFFのミニバンになってしまったのが残念!?