リチウムイオン二次電池のリサイクル時の発熱リスクを減らす新たな電池不活性化技術

AI要約

豊田中央研究所は2024年6月26日、リチウムイオン二次電池(LiB)のリサイクル時のリスクを低減する新技術「iSleepTM」を発表。

フェノチアジンをRS剤として使用し、LiB内部短絡を誘発する性質を発見。

RS剤を添加することでリスク低減、Li金属が正極に取り込まれることでリサイクル効率の向上が期待される。

リチウムイオン二次電池のリサイクル時の発熱リスクを減らす新たな電池不活性化技術

 豊田中央研究所は2024年6月26日、リチウムイオン二次電池(LiB)のリサイクル時のリスクを低減する、新たな電池不活性化技術「iSleepTM」を開発したと発表した。廃棄LiB内に、電池内部に存在する酸化還元種(今回の研究ではフェノチアジン)を正極と負極の間で酸化と還元を繰り返させるへレドックスシャトル剤(RS剤)を添加し、残存電圧を0V近くまで放電させる技術で、LiBの解体/破砕時における発熱などのリスク低減に貢献する。

 今回の研究では、フェノチアジンという有機化合物がRS剤として機能し、LiBの内部短絡を誘発することを発見した。RS剤は、LiBの正極に電子を渡して酸化され、電解液中を移動して、LiB の負極から電子を受け取り還元される、という一連のシャトル反応を繰り返し行う性質がある。このRS剤をLiBに添加することで、電池内部での負極から正極への電子の移動、つまり内部短絡を誘発することが可能になる。

 同研究では、原理検証のため、4.1Vまで充電した試験用LiBに小さな穴を開け、RS剤を含む溶液を添加した。その後、セル容量の10%に相当するRS剤を添加したところ、74時間かけて電圧が0.1Vまで低下することが分かった。また、一連の反応の中で、負極表面に析出したLi金属がLiイオンとして溶け出し、正極に取り込まれることを実験的に確認した。

 同研究で開発したRS剤を用いた不活性化技術は、内部短絡を引き起こすことでLiBを放電させるため、断線したLiBでも放電が促進されることで、リサイクル時のリスクを低減することが期待される。また、析出したLi金属がイオン化して正極に取り込まれることで、Li金属と空気中の水分との接触を抑制することに貢献するだけでなく、Li資源の効率的な回収も期待できる。そのため、同技術は、持続可能な資源の循環を促進し、電池循環システムの実現に貢献する。