娘を通わせるべきは「女子校」か「共学」か?1000人のアンケートで判明した「女子校育ち」のある特徴

AI要約

女子校育ちと共学校の違いについて検討されている記事。女子校育ちのイメージや教育効果について、異なる意見や議論が紹介されている。

保護者や専門家のインタビューを通じて、女子校と共学校の教育効果やジェンダー問題に関する考え方の違いが示唆されている。

女子校育ちという環境が個人の性格や特性にどのような影響を及ぼすかについて、様々な視点から分析されている。

娘を通わせるべきは「女子校」か「共学」か?1000人のアンケートで判明した「女子校育ち」のある特徴

 「入学させるべきは女子校か共学か――?」娘を持つ親は、学校選びの際にこうした悩みに直面することも多いと思います。社会に出たときの「女子校育ち」のメリットは?よく言われる「女子校育ちっぽさ」とは一体?今回、20代~60代の男女1000人を対象に「女子校育ちの特徴」を調査。回答から得られた分析結果の一部を解説します。

● 純粋?裏表がある? 「女子校育ち」の一般的なイメージ

 「女子校育ち」というとあなたはどのようなイメージを抱きますか?

 中高一貫校(※)の女子校で育った筆者は、事あるごとに「女子校育ちっぽいよね~」「女子校ノリだよね~」と言われてきました。

※一般的には、前期中等教育(一般の中学校の3年間で行われる教育)と後期中等教育(一般の高校の3年間で行われる教育)を一貫して行う学校をこう呼ぶ。国立、公立、私立がある

 たしかに自分でも「女子校育ちっぽい」と思ってはいたのですが、よくよく考えてみると「女子校育ちっぽい」とはどういうことなのでしょう?

 ググってみると、「女子校育ちの特徴」「女子校育ちあるある」などのWebページがずらーっと表示されます。それらのページをのぞいてみると、当然、ポジティブなものもあれば、ネガティブなものもありますが、「純粋」と「裏表がある」、「良妻賢母」と「キャリア志向」、「おしとやか」と「サバサバしている」、「男性にモテる」と「恋人がいない」など、対極するワードが並んでいることが気になりました。

 自分の娘の進学を考える保護者の方々に、「女子校育ち」のイメージを聞いてみました。

● かつて3000校以上存在していた 女子校は約270校まで減少

 「女子校出身者は空気が読めないイメージ。異性と一緒にいる共学だと、自分とは違う相手の価値観や考えを知ることができる。異性とのコミュ二ケーションを学んでいくことで、女性としてのちょうどよい振る舞いが身に付くのではないか」(45歳/Aさん)

 「女子校で育つと異性を苦手になってしまうのではないか。異性を理解できないまま社会に出ると生きづらくなると思う」(38歳/Bさん)

 「女子校はリーダーシップ教育を掲げているところが多いと思うが、男女が共生する社会の中でリーダーになるには、共学の中でリーダシップを培う必要があるのではないか」(42歳/Cさん)

 男女平等が叫ばれる世の中において、異性がいない環境で思春期を過ごすことに抵抗を感じている方は、少なくないようです。実際、女子高校の数は、3000校以上存在していた1960年代後半~1970年代までをピークに徐々に減少。2023年時点で269校となりました(文部科学省「学校基本調査」2023年)。現在は共学校がスタンダードであり、共学校に入れたい保護者が大多数だということがわかります。

 一方で、桜蔭学園、女子学院、雙葉学園のいわゆる中高一貫女子校の御三家や、慶大付属の慶應女子などは、今も人気が安定している印象を受けますし、「女子校派」の保護者も根強く存在しているように感じます。

 「女子校で育ったことで上品な振る舞いが身に付いた。ジェンダーフリーといわれるが、女性としてお嬢さんらしさも大切だと思う」(50歳/Dさん)

 「共学に入れると男女関係が出てきて心配。いろいろなことに煩(わずら)わされず、学生のうちしかできない勉強ややりたいことに集中してほしい」(39歳/Eさん)

 「女子校は仲間との絆が強いし、女子同士のコミュニケーションがうまくなると思う。一生ものの友人をつくってほしい」(42歳/Fさん)

 「最近の女子校は、デジタルや理系、リーダーシップ教育に力を入れているところも多く、進学率も高い。これからの時代、リーダーシップのある女性に育ってほしい」(41歳/Gさん)

 「共学だと異性からの視線が気になり、思春期は自分を出せなくなってしまうのではないか。ジェンダーフリーの環境の中に身を置くことで、『女だから』とあきらめてしまうのでなく、やりたいことに打ち込んでほしい」(46歳/Hさん)

 「共学派」も「女子校派」も、価値観や考え方はさまざまですが、特にジェンダー問題やリーダシップについては、双方の認識に差異があるようです。

 アカデミアの世界でも、女子校教育と共学校教育の効果や違いについて、さまざまな議論がなされています。

 米国の心理学者であり、男女別学推進論者であるレナード・サックスは、女性脳と男性脳には先天的な差異があり、諸能力の発達の順序や時期、脳の構造は異なるという点に着目し、発達段階の男女は、別々に教育することが望ましいと主張しています(『男の子の脳、女の子の脳:こんなにちがう見え方、聞こえ方、学び方』草思社、2006年)。

 一方で、米国の神経科学者であるリーズ・エリオットは、男女の脳の先天的な差異を認めながらも、その差異は、子どもたちの行動にある程度、傾向を与える程度であり、決定的ではない、と主張した上で、「共学校は互いの特性から学ぶことが多い」という立場をとっています(『女の子脳 男の子脳 ―神経科学から見る子どもの育て方』NHK出版、2010年)。

 また、女子校という異性がいない環境の中で過ごすことによって、「ジェンダー観が偏る」とする論調もあれば、暗黙的に男性を優位とする共学校のカリキュラムによって、「ジェンダーの固定概念が強化される」という論調もあります。

 リーダーシップに関する教育についても、「女子校は女子だけの中ですべての役割を担うため、リーダーシップが培われる」と述べる研究者もいれば、「異性のいる中でリーダーシップを取る力がなくては社会で通用しない、多感な学生時代は、その後の人間関係や人生を考える基礎になるため、異性と向き合って共に協力し、問題解決をする体験こそ重要」と述べる研究者もいて、研究者によっても意見は分かれたままのようです。

 以上を振り返ると、女子校と共学校に対する世間のイメージや考え方は、驚くほど多様だということがおわかりいただけたかと思います。しかし、なぜこうも多様なのでしょう。

 もちろん、女子校や共学校と一口に言っても、校風も教育理念もさまざまです。地域性も偏差値も異なりますし、信仰のある学校もあります。となれば当然、どこの学校で育ったかによって、個人の性格や特性は変わってくるでしょう。生徒の個性や家庭環境なども影響するはずです。こうした、「女子校か共学校か」という要因以外が個人に及ぼす影響も大きいため、こうした多様なイメージを生んでいるといえます。

 とはいえ、やっぱり、「女子校育ちっぽさ」というのはどこかにある気がします。かく言う私も、思春期の何年かを男性のいない環境に身を置いた経験が、自分自身に何かしら影響を及ぼしているはず……と思ったことが、女子校研究を始めたきっかけでもあります。