経済低迷時「日本=倹約」「アメリカ=破滅的消費」 この“差”はどこから? 専門家解説

AI要約

円安・物価高による生活圧迫の声が広がる中、若年層の消費行動に違いが見られる。

アメリカでは「破滅的消費」が注目される一方、日本では倹約傾向が強まる。

若者の気分を高め、経済を回復させるためにはポジティブな視点を持ち、消費拡大の可能性を模索する必要がある。

経済低迷時「日本=倹約」「アメリカ=破滅的消費」 この“差”はどこから? 専門家解説

 「お昼をコンビニで済まそうとしても平気で500円超える」「東京は便利だけどマンション価格も家賃も高い」(SNSへの投稿)

 円安・物価高の影響を嘆く人々の声。

 総務省が発表した5月の全国の消費者物価指数は、値動きの大きい生鮮食品を除く指数が前年同月比で2.5%上昇し、物価高が生活を圧迫する状況が続いている。

 そんな中、日本の消費傾向を示す興味深い調査結果が三菱総合研究所から発表された。

 「アメリカ経済は悪化するとさんざん言われていたが強い状況が続き、一方で日本はコロナ後も旅行などのペントアップ(反動)需要が回復していない。この疑問が出発点だった」(三菱総合研究所 田中嵩大氏)

 田中氏は、収入のうち消費に回る割合=消費性向について、アメリカと日本を比較。その結果、特に34歳以下の若年層で、アメリカの方がコロナ禍の低迷から回復していることがわかった。

 「アメリカでは、経済的不安がある中でも宝石や高級な衣服などに対して消費、もっと言えば浪費をする『破滅的消費』が話題になっている。一方、日本では物価高が続いていることから、高いものを買うのをやめたり、購入頻度を減らす傾向が見られる」

 経済的な不安があっても「破滅的消費」に走るアメリカの若者。その背景には…

 「アメリカでは、『バイナウ・ペイレーター』という後払い式の決済方法やSNSの普及が影響している。SNSで高級品を買っている人や有名人の投稿を見て自分も消費したくなる新たな傾向から、浪費を行う若者が増えている」

 対照的に、将来の不安に倹約で備える傾向が強い日本。自身も20代後半の若者である田中氏は、こう分析する。

 「SNSやニュースで暗い話題が多いことが、若者の気分を押し下げている一因だ。インフレなどの暗い話題ばかり見ると、前向きな消費を行うのは難しい。嘘をついて明るくする必要はないが、良い側面にも目を向けて若者の気分を高めていくことが重要なのでは」

 必要以上に現状をネガティブに捉える傾向がある日本の若者。その不安をどう払拭するかが、日本経済を回復させるために重要になってくると田中氏は話す。

 「全年代で賃上げが行われているが、特に若者は人手不足が激しいため顕著だ。2023年の20代の賃上げ率は約3%で、今年はそれを上回る可能性もある。実質賃金がマイナスと言われているが、若者に関しては少しプラスになる可能性も。さらに最近では新NISAや副業解禁など、若者のお金を増やす手段が増えてきており、それを後押しすることが重要だ」