JR東日本が「エキナカ」から「マチナカ」へ、不動産事業“方針転換”の狙いとは?

AI要約

JR東日本が新たに不動産子会社を設立し、不動産事業を強化する。今後の戦略投資や領域拡大に注目。

運輸事業と非運輸事業の比率が変化し、非運輸の存在感が高まっている。

大規模開発の余地が減少しており、今後の戦略的投資計画などを追いかける。

JR東日本が「エキナカ」から「マチナカ」へ、不動産事業“方針転換”の狙いとは?

 JR東日本は7月1日、グループの社有地開発や新規不動産の取得・開発を行う子会社、JR東日本不動産株式会社を設立する。これまでの「エキナカ」を中心としたまちづくりから「マチナカ」へと不動産事業の領域を拡大する狙いと勝算とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

● 運輸事業と非運輸事業の 利益に占める割合が逆転

 JR東日本は7月1日、グループの社有地開発や新規不動産の取得・開発を行う子会社、JR東日本不動産株式会社を設立する。これまでの「エキナカ」を中心としたまちづくりから「マチナカ」へと不動産事業の領域を拡大するとともに、回転型ビジネスを加速する。

 同社の2023年度連結営業収益は、運輸セグメントが1兆8536億円、非運輸セグメントが8764億円で、運輸の占める割合は約7割だった。コロナ禍の影響が大きかった2020~2022年度は運輸の割合が落ち込んだが、現在の水準はコロナ前と大差ない。

 一方、利益構造は大きく変化しており、コロナ前は約7割だった連結営業利益に占める運輸の割合は、コロナ禍で運輸が赤字に転落。2023年度にようやく黒字転換したものの、運輸1707億円に対して非運輸1744億円となり、半分を割った。

 2024年度業績予想は、運輸業の営業利益を約7.8%増の1880億円と見込んでいるが、これ以上の劇的な回復は難しいと考えているようだ。これに対して、非運輸の予想は運輸をわずかに下回る1840億円の営業黒字だが、2024年度末には高輪ゲートウェイシティの一部開業を控えており、非運輸の存在感はますます高まっていく。その中核となる不動産事業において、新会社はどのような役割を果たすのだろうか。

● 年々少なくなる 大規模開発の余地

 JR東日本はこれまで、運輸事業、生活サービス事業(流通・サービス事業、不動産・ホテル事業)、IT・Suica事業を「3つの柱」としてきたが、2022年から生活サービス事業とIT・Suica事業を統合して「生活ソリューション事業」に再定義し、「モビリティ」とふたつの軸という言い方をするようになった。

 流通・サービス事業は、コンビニNewDaysや、ecuteなどの駅構内店舗、acureブランドで展開する自動販売機ビジネスなど、駅のスペースを活用する小売業が中心だ。これに対して不動産・ホテル事業はルミネ、アトレなどの駅ビル事業、渋谷スクランブルスクエアやグラントウキョウなどの複合ビル開発、ホテルメトロポリタンなどのホテル事業といった、直営施設経営や賃料収入を中心としたビジネスだ。

 JR東日本は近年、東京駅八重洲口、神田万世橋、新宿、渋谷、横浜などで高層ビル整備や、高輪、竹芝、大井町など東京南エリアのまちづくりを進めてきたが、今後10年も品川駅西口の大規模再開発、渋谷駅再開発の総仕上げ、新宿駅グランドターミナル構想など山手線を中心とした東京圏のネットワーク結節点への戦略的投資を進める計画だ。

 これ以外にも中野駅や松戸駅など拠点駅、地方主要駅でも大規模開発が進んでいるが、その余地は年々、少なくなっている。JR東日本は固定資産として2兆円以上の土地を所有しているが、そのほとんどが国鉄から継承した鉄道事業用地だ。汐留貨物駅跡地などの遊休地は国鉄清算事業団を通じて処分されたため、JRの開発は既存施設の建て替えや再編で生み出したスペースを中心に進めざるを得なかった。