英中銀のQE損失はFRBの3倍、選挙前に政治議論の標的に-調査

AI要約

英中銀がQEプログラムで膨大な損失を出しており、再び政治議論が巻き起こる可能性がある

英中銀の損失は米連邦準備制度や欧州中央銀行よりも大きく、約1300億ポンドに相当

右派政党が損失阻止を提案し、英中銀のQEに対するアプローチが見直される可能性がある

(ブルームバーグ): イングランド銀行(英中央銀行)が量的緩和(QE)プログラムで米金融当局の3倍余りに相当する損失を出していることが新たな調査結果で示された。10年以上に及んだ英中銀の刺激策に伴うコスト負担を巡り、再び政治議論が巻き起こる可能性がある。

資産運用会社コロンビア・スレッドニードルのダイナミック・リアルリターン責任者のクリストファー・マホン氏によれば、2009年から21年にかけて英中銀が購入した国債ポートフォリオから生じる損失は国内総生産(GDP)の4.7-4.9%に相当する。これに対し、米連邦準備制度は同1.3-1.5%、欧州中央銀行(ECB)は同3.2-3.4%相当となっている。

英国でこれは約1300億ポンド(約26兆円)相当の損失となる。09年のQE開始時の合意で、損失は税金によって穴埋めされることになっている。

7月4日の英総選挙まであと数週間に迫り、右派政党「リフォームUK」は英中銀に介入して損失を阻止し、年間350億ポンドの節減を約束する。

金融危機や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から経済を守るために英中銀は09年に債券の購入を開始。ピーク時には8950億ポンド相当を保有していた。QEは財務省に1240億ポンドの利益をもたらしたが、その分は既に使い果たされており、英中銀の資産ポートフォリオ縮小に伴う損失埋め合わせで財務省は数十億ポンドを支払っている。

損失が発生するのは、英中銀のバンクレート(政策金利)に基づく利払いが、資産購入ファシリティー(APF)を通じて保有する債券で得られるクーポン収入よりも高いためだ。英中銀はまた、購入時よりも安い価格で債券を手放している。

リフォームUKのアプローチは極端と考えられているが、マホン氏は世論調査で支持率トップの野党・労働党が政権を握れば「財務省を再び活性化し」、QEに関して現状とは「異なるアプローチ」を取る可能性があると述べた。